地図の図法(2)まっすぐな線が最短距離にならないのはなぜか
角度が正しい世界地図であるメルカトル図法を、作り方の考え方からたどります。高緯度ほど大きく見える理由、航海に使われた等角航路、そして最短距離の大圏航路が曲線になる理由を、地球儀と見比べながら確かめます。
この記事でわかること
- メルカトル図法がどのような考え方で作られているかを説明できる
- メルカトル図法の特徴と、高緯度ほど面積が大きく見える理由を説明できる
- 等角航路と大圏航路の違いと、最短距離が曲線になる理由を説明できる
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地図の図法の後半です。前回は、さまざまな図法のうち正積図法、正距図法、正方位図法を取り上げました。今回は残る一つ、角度が正しい世界地図について学びます。
この記事で使う地図の画像は、前回と同じく、すべて「地図投影法学習のための地図画像素材集」というサイトのものです。すばらしい画像を使わせていただいています。
「角度」が正しい世界地図はどう作る?
前回、面積を考えたときと同じ地図を使って考えてみます。球体の地球の皮を、北極と南極からむくようにしてはがしていく地図です。開いていくと、葉っぱをたくさん連ねたような形になります。
北の向きに注目する
前回はこの地図の面積に注目しましたが、今回は別のところに注目します。葉っぱの一つ一つのパーツの頂点は、もともとすべて北極点でした。つまり、地球儀の上では同じ一つの点を表しています。
北とは、北極点に向かっていく方向のことです。どのパーツでも頂点へ向かう方向が北で、下へ向かえば、同じようにすべて南と表せます。

横に伸ばし、同じだけ縦にも伸ばす
この特性を生かして、角度が正しい世界地図を作ってみます。葉っぱがつながった地図を拡大すると、ある点から地図の上へまっすぐ進む方向は、たしかに北です。ところが、別の点から見ると事情が変わります。北極点へ向かう方向が、まっすぐ上ではなく斜めになってしまうのです。
これでは、角度という観点から使い勝手がよくありません。そこで、どこから見ても上が北になるように、地図を横方向に伸ばして、パーツとパーツの隙間をすべて埋めます。こうすれば、地図のどこにいても上が北になります。

ただし、まだ問題が残ります。横方向だけを伸ばすと、最初の地図と比べて縦と横の比率が変わります。角度の観点からは、これでもまだ使いにくい地図です。
そこで、横に伸ばした場所は、同じだけ縦にも伸ばします。緯度が低い場所は横に少しだけ伸ばしているので、縦にも少しだけ伸ばします。緯度が高い場所は横にたくさん伸ばしているので、縦にもたくさん伸ばします。
こうすることで、縦横の比率は変わらないまま、どこから見ても地図の上が北になる地図を作れます。

皮をむいた地図を伸ばしていくだけで、角度の正しい地図に近づくのですね。

横に伸ばしたら、縦にも同じだけ。この順番をたどっておくと、次に出てくる地図の形に納得がいくよ。
メルカトル図法の特徴
こうして作った地図がメルカトル図法です。メルカトル図法は、角度が正しい正角図法の代表例です。

作り方を振り返ると、葉っぱの頂点、つまり北極点へ向かう方向がすべて真上になるように調整した地図でした。そのため、経線がすべて垂直になり、緯線と直交するという特徴があります。
一方で、作り方の関係から難点もあります。地図の上下の端にあたる高緯度になるほど、縦方向にも横方向にも拡大して描いています。そのため、高緯度に行けば行くほど、実際の面積よりも大きく見えてしまいます。なお、上の地図では南極のほうを少しカットしています。
たとえばグリーンランドです。本当はオーストラリアよりもグリーンランドのほうが小さいのですが、メルカトル図法で描くと、高緯度に位置するグリーンランドは非常に大きく見えます。
航海に利用される理由と等角航路
メルカトル図法の特徴は、もう一つあります。航海に利用されることです。その理由は、等角航路と呼ばれるものが、この地図の上では直線で表されるからです。
日本の周りを拡大したメルカトル図法の地図で考えてみます。日本からアメリカのサンフランシスコまで、船で行くとしましょう。日本からサンフランシスコまで線を引くと、メルカトル図法の地図の上では、ほぼ水平な線になります。

この線が船旅にどう役立つのでしょうか。メルカトル図法は、どこにいても地図の上が北でした。そこで船に乗っている間、コンパス(方位磁石)が指す北から90度ずれた方向へ船を進めます。そうすれば、船は引いた線の上をまっすぐ通っていることになります。
このように、コンパスを使ったときの角度がずっと一定であるような航路を、等角航路と呼びます。
メルカトル図法は、もともと大航海時代に作られた地図です。地図の歴史の回でも少し触れましたが、地図とコンパスさえあれば、どうにかして安全に航海ができないかという考えから生まれました。コンパスが一つあれば、自分たちの進んでいる方向が一直線で表されるという点で、非常に便利な地図だったのです。
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ただし、注意しなければならない点があります。等角航路は直線なので、どう見ても最短距離に見えます。しかし、それはメルカトル図法の地図の上での錯覚でしかなく、等角航路は最短距離ではありません。
実際に日本からサンフランシスコへ、飛行機で最短経路を使って飛ぶとします。すると、先ほどの地図に青で描いた線のほうが最短経路になります。

まっすぐな線が最短距離ではないなんて、少し不思議です。

地図の上の「まっすぐ」と、地球の上の「まっすぐ」は別もの。続きで確かめていこう。
等角航路と大圏航路の違い
等角航路と最短経路の関係を、より正確に作成した図で確かめます。

下の緑の線は、コンパスと船の進む向きを常に一定にした場合に通る線で、これが等角航路です。上の紫のカーブしている線は、飛行機などを使って最短距離で進んだ場合の線です。こちらは前回も出てきた大圏航路といいます。
メルカトル図法では、等角航路は直線になりますが最短距離ではなく、最短距離である大圏航路は曲線になる場合があります。これが非常に重要な特徴です。
なぜ最短距離が曲線になるのか
では、なぜ最短距離が曲線になってしまうのでしょうか。これを理解するには、もう一度球体に戻ったほうがわかりやすいので、地球儀を使って確かめます。
東京とサンフランシスコの真上から地球を眺めると、2 地点間の最短距離である大圏航路は直線に見えます。ただし注意したいのは、この角度からだと、緯線が下にふくらんで見えることです。

そこで地球儀を回し、メルカトル図法と同じように緯線が水平に見える角度から眺めます。すると今度は逆に、大圏航路が上にふくらんでいるように見えます。

角度を戻して大圏航路が直線になる向きから眺めると、緯線が曲がって見えます。緯線がまっすぐな向きから眺めると、大圏航路が曲がって見えます。このように、緯線と大圏航路のどちらが直線で表されるかは、どこから眺めるかによって変わってきます。
メルカトル図法は、あくまでどこから見ても緯線が水平になるように描いた地図でした。そのため、場所によっては大圏航路が曲線になってしまうのです。

眺める角度を変えると、まっすぐに見える線が入れ替わるのですね。

そう。メルカトル図法は、緯線をどこでも水平に描くことを選んだ地図なんだ。
以上が、地図の図法の後半、正角図法とメルカトル図法についての説明です。
この記事の内容を確認する問題に挑戦して、理解を定着させましょう。全10問・約3分
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