地図の図法(1)球体の地球を平らな地図にすると、何が正しく表せるのか
球体の地球を平面に移すと面積や距離をすべては保てない、という出発点から、図法の4つの種類を整理します。そのうえで、面積が正しい3つの正積図法と、中心からの距離と方位が正しい正距方位図法のつくり方と特徴、国連旗との関係を学びます。
この記事でわかること
- 球体の地球を平面の地図に表す難しさと、図法の4つの種類を説明できる
- サンソン図法・モルワイデ図法・ホモロサイン図法(グード図法)のつくり方と違いを説明できる
- 正距方位図法で正しく表されるものと、大圏航路・対蹠点・国連旗との関係を説明できる
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この記事は「さまざまな地図と地理的技能」の第3回で、地図の図法がテーマです。内容が多いため、2回に分けて扱います。ここでは、球体の地球を平面の地図にするには、どのような方法があるのかを考えます。
球体の地球を平面の地図にする難しさ
地球が球体であることは、地図をつくるうえで大きな難しさになります。地球をどのように開いても、あるいは押し潰しても、地球本来の面積や距離を保ったまま紙に移すことはできません。面積や距離などのすべてを正しく紙の上に表現することは、どのような方法を使っても不可能なのです。

そこで、目的に応じて、つまり正しく表現したいものに応じて、さまざまな地図のつくり方があります。このように、地球を紙の上に表現する方法のことを図法、または地図投影法と呼びます。この記事では、その図法について学んでいきます。
図法の4つの種類
図法は、正しく表せるものによって大きく4つに分けられます。面積が正しいと書いて正積図法、距離が正しいのが正距図法です。さらに、方位が正しいのが正方位図法、角度が正しいのが正角図法と呼ばれます。

それぞれの図法の中には、さらに細かい分類があります。この記事で扱うのは、このうち面積・距離・方位が正しい図法で、具体的には面積が正しい正積図法と、距離と方位が正しい正距方位図法です。角度が正しい正角図法については、次回の記事で紹介します。
面積が正しい正積図法
まずは、面積が正しい正積図法から考えます。面積が正しい世界地図は、どうすればつくれるでしょうか。球体である地球の面積を、正しく紙の上に表す方法を考えてみましょう。
みかんの皮のように北極と南極から剥ぐ
次のようなイメージで考えます。まず、地球をみかんの皮を剥くように、北極と南極から細長く剥いでいきます。すると、先のとがった細長い紙片が横に並んだような地図ができあがります。

こうしてできた地図には切れ込みが入っていますが、紙の上での面積は、もとの球体の面積と等しくなっています。ただ、切れ込みがあると見づらいので、上下の部分を真ん中の方へ寄せるように曲げます。こうすれば面積の正しい地図がつくれるのではないか、というのが、次のサンソン図法の考え方です。
サンソン図法
このような考え方から考案されたのが、正積図法の1つ目のサンソン図法です。先ほどの、地球を剥いてできた船底や葉っぱのような形の紙片が並んだ地図を思い出してください。その上下を真ん中の方へぎゅっと寄せるイメージでつくるため、サンソン図法の地図は図のような形になります。

ただし、サンソン図法は面積こそ正しく描けているものの、欠点があります。高緯度になるほど、実際の大陸の形と地図上での大陸の形との歪みが大きくなってしまうのです。この高緯度で歪みが生じるという欠点を直そうとしてつくられたのが、次に紹介する地図です。
モルワイデ図法
正積図法の2つ目は、モルワイデ図法と呼ばれる図法です。先ほどのサンソン図法と比べて優れているのは、高緯度付近の描き方です。

モルワイデ図法では、高緯度付近をサンソン図法とは少し違った方法で加工しています。そのため、地図の両端が丸くなるのが特徴です。その結果、サンソン図法に比べて実際の大陸の形との歪みが少ないという利点があります。

どちらも面積は正しいのに、地図の形がずいぶん違うのですね。

面積を保つやり方は一つではないんだ。高緯度の大陸の形に注目して、2枚を見比べてみて。
ホモロサイン図法(グード図法)
正積図法の3つ目は、サンソン図法とモルワイデ図法を組み合わせたホモロサイン図法で、別名をグード図法といいます。この図法には、なぜ名前が2つあるのでしょうか。グードというのは、この図法を考案した人の名前です。
一方、ホモロサインの「ホモロ」は面積が等しいという意味で、正積図法であることを示しています。「サイン」については覚える必要はありませんが、サンソン図法の曲線にちなんでいます。サンソン図法の地図の曲線は、その曲がり具合がサインカーブになるように計算してつくられています。つまり、正積図法であり、サインカーブを利用してつくった図法という意味の名前です。なお、ホモロサイン図法とグード図法は、どちらの名前で答えてもかまいません。
この図法は、次のようにつくられています。まず、低緯度付近はサンソン図法で描かれています。高緯度付近には、高緯度の歪みが少ないという特徴をもつモルワイデ図法を使います。さらに歪みを少なくするために、海の部分を切り裂いてつくったのが、このホモロサイン図法(グード図法)です。

距離と方位が正しい正距方位図法
続いては、距離と方位が正しい世界地図です。ここでいう方位とは、東や西といった方角のことです。この2つが正しい世界地図は、どうすればつくれるでしょうか。
みかんのヘタを中心に皮を剥く
今度は、次のように考えてみましょう。正積図法では、地球を北極と南極からみかんの皮のように剥いていきました。今回はそうではなく、みかんのヘタを押さえるように地球のどこか1か所を押さえ、反対側から皮を剥いていきます。
すると、ヘタを中心にみかんの皮をすべて剥いたような形の世界地図ができます。この形なら、真ん中のヘタにあたる地点から地球の裏側までの距離も、方位も正しく描けます。
とはいえ、みかんの皮を剥いたままの形では、地図として使いものになりません。そこで、皮と皮の隙間に向かって外側ほど大きく伸ばし、隙間をなくしていきます。こうしてできた円形の地図は、距離と方位が正しいので正距方位図法と呼ばれます。

中心からの距離と方位が正しい
正距方位図法は、地図の中心からの距離と方位が正しく表される地図です。東京を中心とする正距方位図法の地図で、その特徴を確かめていきます。

ここで注意したいのは、距離と方位が正しいのは地図の中心からだけだという点です。たとえば、地図上で中心以外の2地点を選んで結んでも、その間の距離は正しくありません。この地図であれば、東京から別のどの地点までも、距離と方位が正しく表されます。方位でいえば、地図上で東京から真上の方向が北、真下の方向が南にあたります。

中心以外の2地点の距離は、この地図では測れないのですね。

そうなんだ。「中心に立つ自分から見た距離と方位」と覚えておくと、取り違えにくいよ。
大圏航路が直線になる
正距方位図法の特徴の2つ目は、大圏航路の表れ方です。飛行機でまっすぐ飛んだときに最短経路となる道筋を、大圏航路と呼びます。正距方位図法では、地図の中心からの大圏航路が直線で表されます。
地図の円周は地球の裏側
3つ目の特徴は、地図の円周です。円周とは地図のいちばん外側の円のことで、そのすべてが同じ1つの地点を表しています。ここで、もう一度みかんのイメージを思い出してください。皮のいちばん外側は、ちょうどみかんの裏側にあたる部分でした。
その裏側を引き伸ばしたために、地図の円周になりました。つまり、円周はどこも同じ1つの地点で、そこが地球の裏側です。このような地球の裏側の点のことを、対蹠点と呼びます。
したがって、中心の東京から地球の裏側までは、地球を半周した距離です。この正距方位図法の地図では、中心から円周までがおよそ2万kmに当たります。
国連旗に使われている正距方位図法
正距方位図法は、中心をどこに置くか、つまりみかんのヘタをどこで押さえるかによって、さまざまな種類の地図を描けます。実は、国際連合の旗である国連旗には、北極を中心とした正距方位図法が使われています。この北極点を中心にした地図の一部を切り取ったものが、国連旗の図柄になっているのです。

私たちが普段見慣れている地図では、どの国が上でどの国が下かという配置が生まれます。また、場所によっては実際と違った大きさで描かれてしまうこともあります。北極中心の正距方位図法で描くと、国連ができた当時のアメリカとソ連が、ちょうど左右に同じくらいの大きさで並びます。
そして、上には海があるだけなので、どの国が偉いといった意味も生じません。こうした理由から、平和の象徴である国連旗には正距方位図法が使われることになりました。

見慣れた国連旗に、そんな工夫が込められていたとは知りませんでした。

身の回りの地図や旗がどんな図法で描かれているか、気にして見てみると面白いよ。
この記事の内容を確認する問題に挑戦して、理解を定着させましょう。全10問・約3分
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