世界の食料問題 ― なぜ「飢餓」と「飽食」が同時に起こるのか

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UNIT 05 世界の農林水産業 LESSON 10 対応動画あり(11:00)

飢餓と飽食が同時に起こる理由を、自然環境・経済・社会・人口の視点から学び、世界の食料問題のつながりを理解します。

この記事でわかること

  • 世界で十分な食料が生産されているのに、栄養不足がなくならない理由を説明できる
  • 発展途上国の食料問題を、自然環境・経済・社会政治・人口の4つの視点から整理できる
  • 先進国の肥満・肉食・食品ロスが、世界の食料問題とどのようにつながっているか説明できる

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動画:世界の食料問題
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2025年時点で、世界の人口は約82億人です。

そのうち、十分な食事をとることができず、栄養不足に陥っている人は約7億人。その一方で、食べ過ぎなどによって肥満とされる人は約10億人にのぼります。

世界にはこれほど多くの食料が生産されているのに、なぜ「食べられない人」と「食べ過ぎている人」が同時に存在するのでしょうか。

世界の食料問題を理解するためには、単純に「食料が足りないから飢餓が起こる」と考えるだけでは不十分です。食料の生産量だけでなく、貧困、自然環境、紛争、人口増加、そして先進国の食生活まで含めて考える必要があります。

まず、世界全体の食料需給から見ていきましょう。

1.世界には食料が足りているのか

世界の栄養不足人口は約7億人

国連の統計によると、世界では2024年時点で、約7億人が栄養不足の状態にあります。

ここで注目したいのは、人数の推移です。世界人口はこの20年間にも増加していますが、栄養不足人口そのものは大きく減ったとはいえません。

次のグラフで、栄養不足人口の推移を確認してみましょう。

世界の栄養不足人口の推移
世界の栄養不足人口の推移

世界規模で農業技術が進歩し、食料生産量も増えているにもかかわらず、栄養不足の問題は依然として解消されていません。

では、そもそも世界では食料そのものが不足しているのでしょうか。

実は、そうではありません。

世界で生産される米・小麦・トウモロコシ・大豆といった主要穀物だけでも、年間約28億トンに達します。

これを世界中の人々に均等に分けると、1人あたり1日平均約950g。米に置き換えると、ご飯茶碗約14杯分に相当するほどの量です。

数字だけを見ると、世界全体では十分な量が生産されていることが分かります。

世界の主要穀物生産量と1人あたりの量
世界の主要穀物生産量と1人あたりの量

つまり、世界の食料問題の本質は、

「世界全体の食料生産量が絶対的に不足していること」ではありません。

世界全体では十分な食料が生産されているにもかかわらず、その食料が必要な人のところまでうまく行き渡っていないことが大きな問題なのです。


栄養不足が深刻なのはどこか―ハンガーマップ

では、栄養不足は世界のどこで多く発生しているのでしょうか。

国ごとの栄養不足人口の割合を地図にしたものを「ハンガーマップ」と呼びます。

地図を見るときには、特に色の濃い地域がどこに集中しているかに注目してください。

世界の栄養不足人口の割合―ハンガーマップ
世界の栄養不足人口の割合―ハンガーマップ

東南アジアから南アジア、西アジア、そしてアフリカにかけて栄養不足人口の割合が高い地域が広がっています。

特にサハラ以南のアフリカでは、人口の25%以上が栄養不足となっている国も複数あります。

つまり、栄養不足は主として発展途上国に集中しているといえます。

では、なぜ発展途上国、特にアフリカで栄養不足が多いのでしょうか。

「農業が発達していないから」と一つの理由だけで考えるのではなく、ここからは原因を複数の視点に分けて考えてみましょう。


2.発展途上国では、なぜ食料不足が起こるのか

発展途上国の食料問題は、ある一つの原因だけによって発生するものではありません。

主な要因は、

  • 自然環境
  • 経済
  • 社会・政治
  • 人口

という4つに整理できます。

重要なのは、これらの要因が互いに重なり合っていることです。

まず全体像を確認してから、それぞれを詳しく見ていきましょう。

食料問題を引き起こす4つの要因
食料問題を引き起こす4つの要因

2-1.自然環境① 土地生産性の低さ

最初の要因は、自然環境です。

サハラ以南のアフリカには、もともと農業を安定して行うことが難しい地域が少なくありません。

乾燥地域では降水量そのものが少なく、熱帯地域では高温多雨による土壌養分の流出などによって、必ずしも肥沃な土壌が広がっているわけではありません。

さらに、雨の降り方も年によって大きく変化します。

まず、農業生産を難しくする自然条件を整理してみましょう。

自然環境① 土地生産性の低さ
自然環境① 土地生産性の低さ

このように、やせた土壌、不安定な降水、乾燥などの条件が重なることで、農業生産性が低くなりやすい地域があります。

つまり、同じ面積の農地を利用しても、大量の食料を安定して生産できるとは限らないのです。


2-2.自然環境② 気候変動

さらに近年、食料生産を不安定にしているのが気候変動です。

地球温暖化によって、干ばつや洪水などの異常気象が農業に大きな被害を与えるケースが増えています。

具体的な事例として、東アフリカを見てみましょう。

自然環境② 気候変動と東アフリカの干ばつ
自然環境② 気候変動と東アフリカの干ばつ

2020~2022年には、エチオピア、ケニア、ソマリアなどの東アフリカで記録的な干ばつが発生しました。

降水量の不足によって作物が育たず、家畜も失われ、数百万人が食料援助を必要とする状況になりました。

もともと農業生産が自然条件に左右されやすい地域ほど、気候変動の影響も深刻になりやすいのです。


2-3.経済① 貧困

次に重要なのが、経済的な問題です。

その中でも、貧困は栄養不足に陥る最大の要因の一つです。

先ほど見たハンガーマップと、国ごとの所得水準を表した地図を比較してみましょう。

見るポイントは、栄養不足が多い地域と所得の低い地域がどの程度重なっているかです。

栄養不足人口の割合と1人あたり所得の比較
栄養不足人口の割合と1人あたり所得の比較

1人あたりGNIなどの所得指標が低い国ほど、栄養不足人口の割合が高くなる傾向が見られます。掲載している図では、その比較のために1人あたりGDPを用いています。

つまり、食料が市場に存在していたとしても、

それを購入するお金がなければ、食べることはできません。

世界の飢餓は「食料そのものが存在しない」という問題だけではなく、必要な食料を買うことのできない貧困の問題でもあるのです。


2-4.経済② モノカルチャー経済

発展途上国の食料事情を不安定にするもう一つの経済的要因が、モノカルチャー経済です。

モノカルチャー経済とは、コーヒー、カカオ、バナナなど、特定の商品作物の生産・輸出に経済が大きく依存している状態です。

どのような仕組みで食料問題につながるのか、流れを確認してみましょう。

モノカルチャー経済と食料価格
モノカルチャー経済と食料価格

例えばコートジボワールでは、カカオが重要な輸出品となっています。

カカオを外国へ輸出して得た収入を使い、穀物などの食料を外国から輸入するという経済構造があります。

この仕組みでは、

カカオの輸出
→ 外貨を得る
→ そのお金で食料を輸入する

という流れが成立している間は問題ありません。

しかし、世界市場でカカオの価格が下落したり、逆に輸入する穀物の価格が上昇したりすると、購入できる食料が一気に減る可能性があります。

特定の商品作物に依存することは、その商品の国際価格の変動が、その国の食料事情にまで直接影響するというリスクを抱えているのです。


2-5.社会・政治① 紛争と内戦

食料不足は、農業や経済だけの問題でもありません。

紛争や内戦も食料問題を深刻化させます。

戦争が農業に与える影響は、単に農地が破壊されることだけではありません。

紛争・内戦が食料生産を破壊する仕組み
紛争・内戦が食料生産を破壊する仕組み

紛争によって住民が土地を追われれば、農作業を続けることができなくなります。農地や灌漑施設が破壊されたり、物流網が寸断されたりすれば、作った食料を市場まで運ぶこともできません。

1990年代のシエラレオネ内戦では、反政府勢力によって住民の手足を切り落とすという極めて残虐な行為も行われました。

その結果、多くの農民が畑を耕すことができなくなり、農業生産も大きな打撃を受けました。

紛争は「食べ物がない」だけではなく、食料を「作れない」「運べない」「買えない」状態を同時に生み出すのです。


2-6.社会・政治② ランドラッシュ

近年注目されている別の問題が、ランドラッシュです。

ランドラッシュとは、外国企業などが発展途上国で広大な土地を購入・取得し、大規模農業を行う動きです。「大規模土地収奪」と表現されることもあります。

一見すると、大規模な農業投資によって農業生産が増えるようにも見えます。

しかし、誰のための作物が生産されるのかを見る必要があります。

ランドラッシュと現地農民
ランドラッシュと現地農民

外国企業によって取得された農地では、輸出を目的とした商品作物などが栽培されることがあります。

その結果、もともとその土地を利用していた住民が農地を失い、自分たちが食べるための作物を生産できなくなるケースがあります。

つまり、ある国の土地で農業生産が行われていたとしても、その生産物が現地の人々の食料になるとは限らないのです。


2-7.人口① 高い人口増加率

4つ目の大きな要因が、人口増加です。

栄養不足人口の割合を示したハンガーマップと、世界の人口増加率を表した地図を比べてみましょう。

ここでは、人口増加率の高い地域と栄養不足の多い地域がどの程度重なっているかに注目します。

ハンガーマップと人口増加率
ハンガーマップと人口増加率

発展途上国では、人口増加率が高い国が多く見られます。

たとえば、食料生産量が10%増えたとしても、その間に人口が20%増えれば、1人あたりに行き渡る食料はむしろ減少します。

食料需要が増えれば農地をさらに拡大する必要がありますが、利用可能な土地には限界があります。

人口増加に食料生産の増加が追いつかなければ、食料不足が深刻化しやすくなるのです。


2-8.人口② 森林伐採と土壌劣化

人口増加は、別の経路でも食料問題を深刻化させます。

人口が増えれば、より多くの農地や燃料が必要になります。そのため、農地を広げたり薪を確保したりする目的で森林伐採が進むことがあります。

ここで問題になるのが、森林を失った後の土地です。

人口増加・森林伐採・土壌劣化の悪循環
人口増加・森林伐採・土壌劣化の悪循環

森林が失われると、雨によって土壌が流出しやすくなります。

すると、

人口増加
→ 農地拡大・薪の需要増加
→ 森林伐採
→ 土壌流出
→ 土地生産性の低下
→ さらに新しい農地が必要になる
→ さらに森林を伐採する

という悪循環が生じることがあります。

人口問題、森林問題、土壌問題、食料問題は、それぞれ独立した問題ではなく互いにつながっているのです。


2-9.「食料自給率が低いから飢餓になる」は正しいのか

ここで、高校地理で非常によくある誤解を整理しておきましょう。

「発展途上国で栄養不足が多いのは、食料自給率が低いからだ」

という説明です。

この説明は、半分正解ですが、半分誤りです。

まず、よくある考え方を図で確認してみましょう。

よくある誤解―食料自給率が低いと栄養不足になる?
よくある誤解―食料自給率が低いと栄養不足になる?

確かに、アフリカには食料自給率が低く、栄養不足人口も多い国があります。

しかし、

「自給率が低い → 必ず栄養不足になる」

という単純な関係ではありません。

世界全体を比較すると、そのことがよく分かります。

食料自給率だけでは栄養不足を説明できない
食料自給率だけでは栄養不足を説明できない

北アフリカや日本のように、食料自給率が低くても栄養不足人口の割合が低い国は多数あります。

外国から食料を安定的に輸入できるだけの経済力があれば、自給率が低くても食料不足になるとは限りません。

逆に、国内で十分な食料を生産していたとしても、その食料を購入できない貧しい人が多ければ、飢餓は解消されません。

したがって食料問題を説明するときには、

自然環境・経済・社会政治・人口

という複数の視点から考える必要があります。

この考え方を身につけておくと、大学入試などの論述問題でも、「食料自給率が低いから」のような単一原因だけではなく、よりレベルの高い説明ができるようになります。

そして、発展途上国の食料問題は、実は先進国の食生活とも深くつながっています。


3.先進国の食料問題

3-1.先進国では「食べ過ぎ」が問題になる

発展途上国では「十分に食べられないこと」が問題になる一方、先進国では食べ過ぎによる肥満が大きな問題となっています。

世界の肥満率を見ると、その地域差はかなり大きいことが分かります。

世界の肥満率
世界の肥満率

例えばアメリカでは、成人のおよそ4割が肥満に分類されます。資料や統計年次によって値は異なりますが、ここで用いている資料では約37%という高い割合です。

世界の一方では栄養不足が問題となり、もう一方では過剰なカロリー摂取が問題になっているのです。


3-2.なぜ先進国では肥満が増えるのか

先進国で肥満が増える原因は、大きく二つに整理できます。

食生活と運動不足です。

まず、この二つの関係を確認しましょう。

肥満の原因―食生活と運動不足
肥満の原因―食生活と運動不足

原因① 食生活

ファストフードや清涼飲料水など、高カロリーな食品・飲料を大量に摂取する食生活です。

アメリカのような国では、健康的な食品よりも高カロリーな加工食品の方が安く購入できる場合があります。

そのため、特に所得の低い人々ほど肥満率が高くなる傾向も見られます。

原因② 運動不足

もう一つは運動不足です。

自動車での移動が多く、仕事もデスクワーク中心になると、日常生活で消費するエネルギーが少なくなります。

食べる量は増える一方で、体を動かす量は減る。

これが肥満につながります。


3-3.フードデザート―健康的な食料を買えない地域

肥満を「本人が食べ過ぎているから」と個人の選択だけで説明することもできません。

アメリカやイギリスなどでは、フードデザート(食の砂漠)と呼ばれる現象も問題になっています。

これは、住んでいる場所によって「選べる食べ物」そのものが違うという問題です。

フードデザート(食の砂漠)
フードデザート(食の砂漠)

フードデザートとは、新鮮な野菜や果物などを購入できる店が近くにない地域を指します。

特に所得の低い地域では、大型スーパーまで遠い一方で、近くにあるのはコンビニエンスストアやファストフード店だけ、ということがあります。

その結果、住民は安価な加工食品やファストフードに頼らざるを得なくなります。

つまり肥満も、単なる本人の自己管理だけではなく、所得や居住地域、食料へのアクセスと関係する社会的な問題なのです。


3-4.肉食は世界の穀物需要を増やす

そして、先進国の食生活が世界全体の食料需給に大きな影響を及ぼす例が、肉食です。

肉は動物から直接生まれるわけではありません。

家畜を育てるためには、大量の穀物を飼料として与える必要があります。

肉1kgを生産するために、どれほどの穀物が必要なのかを見てみましょう。

肉1kgを生産するために必要な穀物量
肉1kgを生産するために必要な穀物量

例えば、牛肉1kgを生産するには、約11kgのトウモロコシが飼料として必要です。

豚肉では約7kg、鶏肉でも約4kgが必要になります。

さらに現在、世界で生産されるトウモロコシの6割近くが家畜の飼料用として利用されています。

ここから、肉食と世界の食料問題を考えるうえで重要な考え方が出てきます。

肉食と「オリジナルカロリー」
肉食と「オリジナルカロリー」

肉を食べるということは、間接的には、その肉を生産するために家畜が食べた何倍もの穀物を消費していることになります。

この考え方をオリジナルカロリーといいます。

もし家畜の飼料となっている穀物を人間が直接食べることができれば、理論上は、同じ量の穀物からより多くの人にカロリーを供給できます。

さらに問題となるのが、国際的な穀物価格です。

先進国で肉食が増えれば、家畜の飼料として使われる穀物の需要が増えます。

すると、

肉の需要増加
→ 飼料穀物の需要増加
→ 世界の穀物価格上昇

という影響が生じる可能性があります。

これは、穀物の輸入に頼る発展途上国にとって大きな問題です。

主食となる穀物の価格が上昇すれば、所得の低い人々ほど食料を購入することが難しくなり、食料不足に直結することがあります。


3-5.食品ロス―食べ過ぎる一方で大量に捨てる

先進国では、「食べ過ぎ」と同時に、大量の食料を無駄にする問題も発生しています。

日本の供給カロリーと実際の摂取カロリーを比べると、その間に大きな差があります。

その差に注目してグラフを見てください。

日本の1人1日あたり供給カロリーと摂取カロリー
日本の1人1日あたり供給カロリーと摂取カロリー

日本では、毎年500~600万トン規模の食品が廃棄されてきました。

国民1人あたりに換算すると、毎日お茶碗一杯分程度の食料を捨てている計算になります。

しかも、この量は、国際機関が発展途上国に対する食料援助として供給している量を大きく上回ります。

つまり世界の一方では十分な食料を食べられない人がいる一方で、別の地域では食べられる食料が大量に廃棄されています。


3-6.先進国の食生活と途上国の食料問題はつながっている

ここまで見てきた、

  • 肥満
  • 肉食
  • 食品ロス

は、一見すると先進国だけの「内輪の問題」のように見えるかもしれません。

しかし、実際には世界の食料問題と密接につながっています。

例えば、ハンバーガーなどのファストフードの消費が増えれば、過剰なカロリー摂取によって肥満が増える可能性があります。

そして、ハンバーガーに使われる肉を安く大量に生産するためには、大量の穀物を家畜の飼料として使用します。

すると、

先進国で肉の消費が増える
→ 飼料用穀物の需要が増える
→ 世界の穀物価格が上昇する
→ 穀物を輸入する途上国の負担が増える
→ 貧しい人々が食料を購入しにくくなる

というつながりが生まれます。

先進国の人々が何を食べるかという選択が、途上国の人々が「食べられるかどうか」にまで影響する可能性があるのです。


4.理想の食料援助のあり方とは

最後に、先進国から発展途上国への食料援助について考えてみましょう。

次の2人の意見を比べてみてください。

食料援助を考える―AさんとBさんの意見
食料援助を考える―AさんとBさんの意見

Aさんは、こう考えます。

「世界には十分な食べ物があるのだから、先進国で余っている食料を今すぐ無料で途上国に送るべきだ。」

一方、Bさんはこう考えます。

「無料で食料を送り続けても、その場しのぎにしかならない。現地の農業そのものを発展させる支援をするべきだ。」

どちらの考え方が正しいでしょうか。

実は、どちらか一方だけが正しいわけではありません。

紛争や自然災害などによって食料を手に入れられない人々に対し、緊急に食料を提供することは絶対に必要です。

今まさに飢えている人に対して、「将来農業が発展するまで待ってください」ということはできません。

その一方で、長期的にはBさんの視点も重要です。

外国から無料の食料が大量に入ってくると、現地の農家が生産した作物よりも援助食料の方が安くなります。

すると、現地の農家が作った作物が売れなくなる可能性があります。

農家の収入が減れば、かえって貧困が深まり、長期的な食料生産能力を弱めてしまうことさえあります。

したがって重要なのは、

「食料援助をするか、しないか」

という単純な二択ではありません。

緊急時には生命を守るための食料援助を行いながら、長期的には農業技術、灌漑設備、流通網、農民の所得向上など、その国が自ら食料を安定して確保できる仕組みを支援していく必要があります。

その国の状況をよく理解し、実情に合った支援を行うことが重要なのです。


まとめ―世界の食料問題は「食料の量」だけの問題ではない

世界には、約7億人の栄養不足人口がいる一方で、約10億人の肥満人口が存在します。

しかし世界全体で見れば、主要な食料は十分な量が生産されています。

それでも飢餓がなくならないのは、食料問題が単なる生産量の問題ではないからです。

発展途上国では、

自然環境・貧困・モノカルチャー経済・紛争・ランドラッシュ・人口増加・森林伐採

など、さまざまな要因が重なり合っています。

一方、先進国では、

肥満・肉食・食品ロス

が問題となっています。

そして、この二つは別々の問題ではありません。

先進国の食生活が世界の穀物需要や価格に影響し、それが食料を輸入する発展途上国の人々の生活にも影響します。

世界の食料問題を理解するときに最も大切なのは、

「食料はどれだけ生産されているのか」だけではなく、「誰が、どこで、どのようにその食料を手に入れられるのか」まで考えることです。

理解できたか確認したい場合は、この記事に対応した確認問題にも挑戦してみてください。

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今回のテーマは「世界の食料問題」でした。

次回は、「日本と世界の食料自給率」について解説します。

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