氷河地形、カルスト地形、サンゴ礁河川と海岸以外の小地形にはどんなものがあるのだろう
河川や海岸のほかにも、小地形をつくるはたらきがあります。取り上げるのは、氷河が山を削ってできる氷河地形、石灰岩が雨水に溶けてできるカルスト地形、サンゴがつくるサンゴ礁の3つです。地形の名前とでき方を、実際の場所とあわせて見ていきます。
この記事でわかること
- 氷河がつくるカール・U字谷・ホーン・モレーンなどの地形と、山岳氷河と大陸氷河の違いを説明できる
- 石灰岩の溶食でできるドリーネ・ウバーレ・ポリエや鍾乳洞などのカルスト地形と、その代表的な場所を説明できる
- サンゴ礁の3つの形態(裾礁・堡礁・環礁)が、陸地の沈降とともにどう移り変わるかを説明できる
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前回までは、河川や海岸に見られる小地形を取り上げてきました。今回はそれ以外の小地形として、氷河がつくる氷河地形、石灰岩が雨水に溶けてできるカルスト地形、そしてサンゴがつくるサンゴ礁の3つをまとめて解説します。
氷河が山を削ってできる地形
氷河とは、大きな氷の塊がゆっくりと動いているものです。緯度や標高が高く、寒くて雪がたくさん降る場所では、降った雪が夏でもとけきらずに、どんどん積もっていきます。
こうして何十メートルにも積もった雪が、その重さでぎゅっと押し固められて、大きな氷の塊ができます。この氷の塊が斜面にある場合、自分自身の重さでずるずると動いていきます。その速さは、1日に数cm〜数十cmほどとゆっくりです。
氷河は「氷の河」と書きます。巨大な氷の塊がゆっくり動くようすが、まるで川の流れのように見えることから、この名前が付きました。
動く速さは遅いものの、厚さ数十メートルの氷の塊が重力に引きずられて動いていきます。そのため氷河は、河川と比べて削る力(侵食力)と運ぶ力(運搬力)が強力です。氷河が動いたあとの場所は、地面が大きく削られます。こうして氷河が動くことで形成された地形を、まとめて氷河地形といいます。

アルプス山脈のカールとU字谷
実際の氷河地形の例として、スイスとイタリアの間にあるアルプス山脈を取り上げます。アルプス山脈は新期造山帯に位置する山脈で、現在でも多くの氷河が見られます。こうした美しい氷河地形は、観光名所にもなっています。
まず、山の上のほうが氷河にえぐり取られ、お椀のような形にくぼんでいる地形を、カール(圏谷)といいます。アイスクリームをスクープですくい取ったあとのような形です。
そして、カールの下のほうで、氷河が通ったあとにつくられる谷をU字谷と呼びます。文字どおり、横から見るとアルファベットのUのような形をしているのが特徴です。このU字谷が海に沈むと、前回のレッスンで取り上げたフィヨルドになります。

ホーン(尖峰)
また、山頂の周りが氷河によって削られて、鋭く尖って残った山をホーン(尖峰)といいます。アルプス山脈のマッターホルンは、ホーンの代表例です。

日本で見られるカールとホーン
こうした氷河地形は、日本でも見ることができます。例えばカールには、飛騨山脈(北アルプス)の涸沢カールなどがあります。ホーンの例としては、同じく北アルプスにある槍ヶ岳などが挙げられます。どちらも、登山をする人にとっては聖地のような場所です。

日本の山にも、カールやホーンがあるのですね。

地形の名前を知っていると、山の景色の見え方が変わります。登山の楽しみが一つ増えるよ。
氷河の末端に見られる地形
流れてきた氷河の終わりの部分には、氷河が運んできた岩くずなどが堤防のように堆積した丘が見られます。この丘をモレーンといいます。氷河は川の流れでは動かないような大きな岩も運べるため、氷河がとけたあとには、そうした大きな岩などが残ってモレーンが形成されます。
このモレーンによってせき止められてできた湖や、氷河が削ってできたくぼみに水がたまった場所が、氷河湖です。

エスカーとドラムリン
氷河の末端部には、モレーンや氷河湖のほかにも見られる地形があります。例えばエスカーは、岩くずなどが細長く堆積した地形です。これは、氷河の底を流れるとけた水の川が、岩くずなどを堆積させてできたものです。また、ドラムリンは、氷河によって形成された楕円形の小さな丘を指します。

ドラムリンのでき方には諸説あります。一度できたモレーンがふたたび侵食されたと説明する資料もあれば、氷河が後退する際につくられたとする資料もあります。このような地形がドラムリンと呼ばれる、という程度に押さえておけば十分です。
山岳氷河と大陸氷河
カールやホーンをつくる、山の上にあるような氷河は、山岳氷河と呼ばれます。氷河は大きく2種類に分けられます。もう1つは陸地全体を広く覆うタイプの氷河で、大陸氷河あるいは氷床といいます。
現在、大陸氷河が見られる場所は、ほとんどが南極大陸に集中しています。そのほかには、グリーンランドに少し存在している程度です。しかし、地球の気温が今よりも低かったころには、大陸氷河が今よりもずっと広い範囲に存在していました。
最終氷期に広がった氷河
地球の気温が低かった期間を氷期といい、その中で一番最近のものを最終氷期と呼びます。最終氷期は、今から約7万年前から約1万年前までの期間です。この最終氷期には、氷河が次の地図に示す範囲まで広がっていました。

ヨーロッパでは、イギリスやスカンディナビア半島が氷河に覆われ、ドイツの北部まで氷河が来ていました。このため、ドイツより北のヨーロッパは、氷河に地面の表面を削られたことで土壌がやせており、あまり農業に向いていない土地になっています。この話は、農業の分野でもあらためて登場します。
北アメリカ大陸では、五大湖がすっぽり隠れるくらいの範囲まで、氷河に覆われていました。五大湖も、氷河によって削られてできた氷河湖に分類されます。しかも、氷河湖としては世界最大のものです。
この五大湖は、安定陸塊のレッスンで、ケスタの一例としても紹介しました。構造平野の中で軟らかい地層の部分を削った力の正体が、氷河です。つまり、五大湖は氷河で削られたケスタに水がたまってできた氷河湖であり、ここで2つの話がつながります。
石灰岩が溶けてできるカルスト地形
カルスト地形とは、石灰岩がつくり出した特徴的な地形の総称です。石灰岩は、炭酸カルシウムを主成分とする岩石です。セメントの原料になるほか、ガラスなどをつくる際にも使われます。身近なところでは、チョークや、グラウンドに線を引く粉も炭酸カルシウムです。
この炭酸カルシウムは、雨に溶けやすい性質があります。もう少し正確にいうと、雨水の中の二酸化炭素と反応しやすい性質です。そのため、石灰岩の土地に雨が降ると、地面がだんだんと溶けていきます。このように地面が溶かされることを溶食といい、溶食によってつくられたさまざまな地形をまとめてカルスト地形といいます。

ドリーネ・ウバーレ・ポリエ
溶食によってできた地面のくぼみを、ドリーネといいます。ドリーネの直径は、数m〜数百mほどです。目で見て、へこんでいるのがはっきりわかるくらいの大きさです。
溶食が進んで、ドリーネどうしがつながったものがウバーレです。さらに溶食が進み、集落ができるくらいの広い平地になったものを、ポリエまたは溶食盆地といいます。
次の模式図では、ポリエがドリーネやウバーレより少し大きいくらいに描かれています。しかし、実際の規模はまったく違います。ポリエは、幅が数km〜数十kmにもなる平野です。下に水がしみ込まず、地表を水が流れるくらいまで溶食が進んだ場所を指します。

小さいほうから順に、ドリーネ、ウバーレ、ポリエ。この3つはセットで覚えてしまいましょう。

ドリーネ、ウバーレ、ポリエ……カタカナが続いて、混ざってしまいそうです。

声に出して何度か唱えてみて。リズムで覚えた言葉は、試験のときにすっと出てくるよ。
鍾乳洞とタワーカルスト
カルスト地形は、ほかにもあります。石灰岩の地面に降った雨は、ドリーネやウバーレにできた割れ目から地下へとしみ込んでいきます。そうして地面の中までどんどん溶かされ、地中に大きな空洞ができることがあります。こうしてできた空間が鍾乳洞です。
また、石灰岩には溶けやすい場所と溶けにくい場所があり、その違いによって凸凹が巨大化して、タワーのようになる場所があります。このような場所を、タワーカルストといいます。
カルスト地形が見られる主な場所
カルスト地形が見られる主な場所は、日本では山口県の秋吉台です。海外では、カルスト地形の名前の由来にもなったスロベニアのカルスト地方や、中国の桂林などがあります。地図上でこれらの場所が示されたら、カルスト地形と結びつけられるようにしておきましょう。

秋吉台と桂林で見るカルスト地形
山口県の秋吉台には、カルスト地形を実際に観察できる散策路も設けられています。地表には大小さまざまなくぼみや穴があいていて、その一つ一つがドリーネ、あるいはウバーレと呼ばれるものです。
カルスト地形が広がる土地には、原料としての石灰岩を採取するセメント工場が立地しやすいという特徴もあります。秋吉台の周辺には、山が白くなっている場所もあります。その正体は、山を掘って石灰岩を採取しているセメント工場です。

石灰岩はセメントの原料として重要で、日本で100%自給できる数少ない資源です。秋吉台の周辺では、この石灰岩を安定して供給できるように、セメント工場から港まで専用の輸送路も設けられています。
地下に広がる鍾乳洞
秋吉台の地下には鍾乳洞が広がっており、観光資源としても生かされています。

写真に添えた式は、カルスト地形で石灰岩が二酸化炭素と雨水によって溶かされるようすを、化学反応式で表したものです。地理の学習でここまで理解する必要はありませんが、理系の人は参考にしてみてください。
ピナクルとカレンフェルト
秋吉台では、白い岩がたくさん並んでいるようすも見られます。この岩の一つ一つをピナクルといい、ピナクルがたくさん並んでいる場所をカレンフェルトと呼びます。
石灰岩は、どこでも均等に溶けるわけではありません。雨水の流れ方などによって、溶けやすい場所と溶けにくい場所があります。溶けにくい場所が取り残されることで、ポコポコと出っ張ったピナクルが形成されます。

地形図で見るカルスト地形
秋吉台を地形図で見ると、特徴的な地図記号がたくさん並んでいます。これは、小凹地または凹地を表す地図記号で、凹地とはへこんでいる場所のことです。秋吉台の地形図では、この記号でドリーネやウバーレを表しています。

地形図に凹地の地図記号がたくさん並んでいたら、カルスト地形だと読み取れるようになりましょう。
桂林のタワーカルスト
カルスト地形の例を、もう一つ取り上げます。世界遺産にもなっている中国の桂林で、特徴的に見られるタワーカルストです。細長い山のような形がたくさん見られますが、これも石灰岩の溶食によってつくられた地形です。
でき方は、カレンフェルトと同じです。雨水に溶かされずに残った場所が、大きくタワーのような形になったものがタワーカルストです。

サンゴがつくるサンゴ礁
サンゴ礁をつくるサンゴは、体内に共生する藻類の光合成によって成長します。そのため、暖かくて太陽の光が届きやすい、浅い場所で発達します。
裾礁・堡礁・環礁
サンゴ礁は、その形態によって、裾礁・堡礁・環礁の3つに分けられます。裾礁、堡礁、環礁の順番で発達していくので、3つをまとめて覚えておきましょう。

裾礁は、陸地にサンゴがくっついているタイプです。日本で見られるサンゴ礁は、基本的にこのタイプです。
陸地が沈んでいくと、陸地に接していたサンゴ礁は、光を求めて上へ上へと伸びていきます。サンゴは、共生する藻類の光合成がないと生きていけないためです。こうして、沈んでいく陸地とサンゴ礁の間に海が入ってきたものを、堡礁と呼びます。
堡礁は、英語でBarrier Reefといいます。世界的に有名なオーストラリアのグレートバリアリーフも、この堡礁に分類されます。
最後は環礁です。陸地がさらに沈んで、サンゴ礁だけになってしまったものを指します。太平洋のビキニ環礁や、インド洋のモルディブなどが代表例です。
礁湖(ラグーン)
サンゴ礁と陸地の間の水域は、ラグーンと呼ばれます。海岸地形で登場した潟湖も、ラグーンでした。英語ではどちらも区別せずにラグーンと呼びます。日本語では、サンゴ礁のラグーンを潟湖ではなく礁湖と呼んで区別します。

同じラグーンでも、日本語では呼び名が変わるのですね。

漢字に注目すると迷わない。「礁」の字が入っていれば、サンゴ礁のほうだよ。
まとめ
今回取り上げた3つの小地形を、つくるはたらきと主な地形で整理します。
| 小地形 | つくるはたらき | 主な地形 | 例に挙げた場所 |
|---|---|---|---|
| 氷河地形 | 氷河(山岳氷河・大陸氷河)が動くことによる、強い侵食と運搬 | カール(圏谷)、U字谷(沈水するとフィヨルド)、ホーン(尖峰)、モレーン、氷河湖、エスカー、ドラムリン | アルプス山脈(マッターホルン)、北アルプス(涸沢カール、槍ヶ岳)、五大湖 |
| カルスト地形 | 石灰岩の溶食 | ドリーネ、ウバーレ、ポリエ(溶食盆地)、鍾乳洞、ピナクル、カレンフェルト、タワーカルスト | 山口県の秋吉台、スロベニアのカルスト地方、中国の桂林 |
| サンゴ礁 | サンゴの成長と陸地の沈降 | 裾礁、堡礁、環礁、礁湖(ラグーン) | 日本(裾礁)、グレートバリアリーフ(堡礁)、ビキニ環礁・モルディブ(環礁) |
このほかの小地形として、乾燥地形を紹介している教科書や資料集もあるかと思います。乾燥地形については、気候分野の乾燥地域の単元で紹介する予定です。
この記事の内容を確認する問題に挑戦して、理解を定着させましょう。全10問・約3分
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