河川がつくる小地形(扇状地、氾濫原、三角州)川は山から海までに、どんな地形をつくるのか
今回から小地形に入ります。河川には侵食・運搬・堆積という3つのはたらきがあり、上流から河口までにさまざまな地形をつくります。V字谷、扇状地、氾濫原、三角州を順に取り上げ、それぞれの形成過程と土地利用を見ていきます。
この記事でわかること
- 河川の侵食・運搬・堆積のはたらきと、上流から河口までに並ぶ小地形の順番を説明できる
- 扇状地の扇頂・扇央・扇端と天井川について、形成過程と土地利用を説明できる
- 氾濫原の自然堤防・後背湿地・三日月湖と、形による3種類の三角州の違いを説明できる
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前回までは大地形を扱ってきました。大地形とは、大陸や山脈など、世界地図で見て分かるような大きな規模の地形のことでした。
一方の小地形は、地形図レベルの小規模な地形を指します。目で見て「あそこにこんな地形がある!」と分かるくらいの大きさです。小地形は、川や海、氷河などさまざまな要因でつくられます。今回はそのうち、川、つまり河川によってつくられる小地形にどのようなものがあるのかを取り上げます。
河川が地形をつくる3つのはたらき
「河川がつくる」とは、どういうことでしょうか。河川には、地形を変える3つのはたらきがあります。それが侵食・運搬・堆積です。
侵食とは、流れる水が地面を削り取るはたらきのことです。運搬は、削り取った土砂を下流へ運んでいくはたらきを指します。そして堆積は、流れが弱くなったところで土砂を積もらせるはたらきです。

河川は上流ほど流れが急で、下流へ行くと流れが弱くなります。そのため、上流では侵食作用のほうが強く、下流では堆積作用のほうが強くなります。この3つの力によって、川があるところではさまざまな地形がつくられます。
河川がつくる小地形の全体像
ここからは、河川がつくる小地形を上流から順に解説します。取り上げるのは、V字谷、扇状地、氾濫原、そして三角州です。下の模式図は、これらの位置関係を1枚にまとめたものです。

それぞれの小地形は、「形成過程」と「土地利用」の2点を意識して見ると整理しやすくなります。形成過程とは、その地形がどのようにつくられたかということです。土地利用とは、その土地が何に使われることが多いかということです。
V字谷と谷底平野
まずは、最も上流で見られる地形です。谷の形がV字型になっている場所をV字谷といいます。川の流れが激しい上流部では、水の流れが山を削ることで、このような地形がつくられます。
また、洪水が起こると谷の側面にも侵食が広がり、そこに土砂が堆積します。すると、谷底平野と呼ばれる平野ができあがります。谷底平野は洪水の危険性が高いため、公園やグラウンドなどに利用されることが多い土地です。

扇状地
続いては、川が山から平野部に出てくるところです。ここでは流れが急に緩やかになるため、川の運搬力が弱まります。すると、山から運ばれてきた土砂が、山の出口(「谷の出口」ともいいます)に積もります。この積もった形が扇形になることから、扇状地と呼ばれます。
扇状地は、上から順に扇頂・扇央・扇端という3つの部分に分けられます。下の航空写真では、扇形に広がる範囲と、3つの部分の位置関係を確かめられます。

扇頂・扇央・扇端の土地利用
まずは扇頂です。扇頂は、山から出てくる水を利用しやすい場所です。ただし土石流の災害にあいやすいため、大規模な集落は形成されにくいという特徴があります。
一方で、扇央は水が得にくいため、人が住みにくい場所です。扇央部分は、谷から流されてきた「砂礫」が積もってできています。砂礫は粒が大きく、水を通しやすい土砂です。そのため、水が地面の下を流れる「伏流」という現象が起こります。その結果、扇央を流れる川は、普段は地表に水が流れていない水無川になります。
その代わり、扇央では水をあまり必要としない作物がつくられることが多く、その代表例が果樹園です。また戦前には、蚕を育てるための「桑畑」として利用されることも多い場所でした。
扇端では、扇央で伏流していた水が湧き出てくる「湧水」が起こります。そのため、扇端は集落が最も発達しやすい場所になります。集落は扇端の湧水帯に沿って発達します。そのため家が列状に並ぶことも多く、このような集落の形態を「列村」といいます。
扇頂・扇央・扇端の土地利用の違いと、地面の下を流れる水の動きは、次の模式図の平面図と断面図にまとめられます。

地形図で見る扇状地
同じ場所を航空写真と地形図で並べたのが、下の図です。地形図では等高線が扇形に描かれ、扇央部分には果樹園の地図記号、扇端の部分には集落があることがわかります。また、道路も等高線に沿ってつくられています。

天井川
扇状地で見られる地形を、もう一つ紹介します。天井川といって、川底が周囲の地面よりも高くなっており、時には川が道路の上を通こともある珍しい地形が、扇状地では見られることがあります。下の地形図では、川の下にトンネルがあり、そこを道路が通っている様子が読み取れます。

どうしてこのような地形ができるのでしょうか。扇状地では、山から川が運んできた土砂がたくさん堆積します。すると、川の周りに土砂がたまり続けて、川底がどんどん高くなっていきます。
ここで大きくかかわるのが、人の手で築かれた堤防です。洪水を防ぐために川の両側に堤防を築くと、川の流れる場所が固定されます。すると、土砂は堤防の内側の川底にたまり続けます。川底が上がるとまた水があふれやすくなるため、そのたびに堤防をかさ上げすることが繰り返されてきました。こうして川底が周囲の平地よりも高くなり、やがてその下を道路が通れるくらいの高さになると、天井川が形成されます。

川の下をトンネルでくぐる道があるなんて、初めて知りました。川のほうが道路より高い所を流れているのですね。

名前のとおり「天井」を流れる川なんだ。この天井川は有名なのでテレビなどでも度々取り上げられました。
天井川の下のトンネルをストリートビューで見ると、下の写真のようになります。下から見ると、上に川が流れているとは気づかないかもしれませんが、ここはれっきとした川です。

氾濫原
扇状地からさらに下流に下ると、土地は平らになり、川の流れはさらに緩やかになります。このような場所では、大雨で洪水が起きたときに、川の水が広い範囲にあふれ出します。すると、あふれた水が上流から運んできた土砂が、川の周りに積もります。このように、過去の洪水によってつくられた地形を、氾濫原といいます。
自然堤防と後背湿地
氾濫原では、洪水が起こったときに川の水があふれ、川の岸には水に含まれていた土砂が積もります。洪水がおさまると、川の水位はもとに戻りますが、岸に積もった土砂はそのまま残ります。これが繰り返されて、川のすぐ外側の土地が、周囲よりも高い丘のような形に変わっていきます。このような場所を、自然にできた堤防という意味で、自然堤防といいます。
自然堤防は周囲よりも土地が高く、洪水のときにも水害にあいにくいので、集落が立地しやすい場所になっています。一方で、自然堤防の後ろ側には、洪水のときに流された泥水がたまった低い土地が広がります。水はけが悪く、乾きにくい土地です。このような土地を後背湿地といい、水田などに利用されます。

実際の氾濫原を航空写真で見ると、下の写真のようになります。川の周囲の自然堤防の上に集落が立地し、その後ろの後背湿地が水田に利用されている様子がはっきりと見て取れます。

三日月湖(河跡湖)
また、氾濫原では三日月のような形になった湖が見られることがあります。このような湖を三日月湖、あるいは「河の跡」と書いて「河跡湖(かせきこ)」と呼びます。
どうやってできたのかというと、昔はそこを川が曲がりくねって流れていました。ところが洪水が起こったことで川の勢いが増し、蛇行していた川がまっすぐにつながってしまいます。すると、曲がっていた部分だけが取り残されて、三日月のような形の湖になったのです。

洪水が起きると、川の流れる道筋まで変わってしまうのですね。

川はいつも同じ場所を流れているとは限らないんだ。地図で川の近くに弓のような形の湖を見つけたら、昔の流れの名残かもしれないよ。
北海道で見られる三日月湖の例が、下の航空写真です。

三日月湖の中には、すでに水がなくなり、平地になったものもあります。それでも、昔そこに川が流れていた頃の地形は残っています。今は川がないのに、昔あった川の自然堤防の上に家が並んでいる、という場所も見られます。下の航空写真がその例です。

三角州
最後は、川が海に出るところ、つまり河口部分で見られる地形です。河口付近は土地が非常に平らなので、川の流れは緩やかになり、運ばれてきた土砂が積もり続けます。こうして積もった土砂によってつくられた地形が、三角州です。
形による3つの分類
三角州は、その形によってさらに3つに分類されます。1つ目は、鳥の足のように見えることからその名がついた鳥趾状三角州です。土砂がたくさん流れてきて波が弱い河口では、土砂が沖へ運ばれにくくなります。そうした場所では土砂が積もり続け、いくつもの方向に足が伸びるように、このような三角州が形成されます。代表例は、アメリカのミシシッピ川の河口です。
2つ目は、円弧状三角州と呼ばれるものです。鳥趾状三角州よりも、波が海岸を削る力が強い場所では、三角州の先端部分が波で削られます。それでも土砂がどんどん供給されるため、コンパスで円を描いたような形になります。代表例は、アフリカのナイル川です。
3つ目として、カスプ状三角州があります。海の波による侵食作用がさらに大きいと、河口に近い部分以外の土砂は波で削られてしまいます。その結果、河口付近だけが尖ったような形の三角州になります。代表例は、イタリアのテベレ川です。
3つの三角州の形の違いは、次の図で比べられます。


同じ三角州でも、波の強さによって形がこんなに変わるのですね。

川が運んでくる土砂と、波が削る力の綱引きだと考えるとわかりやすいよ。どちらが強いかで形が決まるんだ。
三角州の土地利用
三角州の土は細かくて水持ちがよいので、水田に利用されることが多くなっています。日本だけでなく、東南アジアやバングラデシュなど、広大な稲作地帯が広がる三角州も多く、たくさんの人を養うことができます。
一方で、海のすぐ近くで標高も低いので、水害にあいやすいという危険性もあります。
用語の整理:堆積平野と沖積平野
最後に、用語を整理しておきます。土砂が積もることによってつくられる平地を「堆積平野」といいます。堆積平野の中でも、特に川が運んできた土砂によってつくられた平野を、沖積平野といいます。なお、ほかの堆積平野としては、川ではなく海によってつくられた「海岸平野」があります。
この記事の内容を確認する問題に挑戦して、理解を定着させましょう。全10問・約3分
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