河岸段丘と台地(洪積台地)川のまわりで階段状になった地形は、どのように形成されたのか
平野に関する用語はややこしく、つまずきやすいところです。まず平野の用語を整理し、そのうえで河岸段丘と台地のでき方と土地利用、崖下に集落が集まる理由を見ていきます。
この記事でわかること
- 侵食平野と堆積平野の区別と、沖積平野と洪積台地の違いを説明できる
- 河岸段丘が形成される過程と、段丘面・段丘崖の土地利用を説明できる
- 台地のでき方と、台地面と崖下の土地利用の違いを説明できる
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「洪積台地って何? 河岸段丘ってどうやってできるの?」というのが、今回のテーマです。地形の学習でつまずく理由の一つは、ややこしい言葉がたくさん出てくることです。説明を読んでもイメージが湧かなかったり、漢字を見ても意味を推測しにくかったりして、頭の中がこんがらがってしまいます。
一方で地形は、「こういう地形を何と言いますか?」と問われ、「沖積平野」のように単語で答える問題が、模試や入試で出されやすい分野でもあります。こうした問題は、言葉の意味を正しく理解していれば答えられます。そのため地形を勉強するコツの一つは、言葉の意味をあいまいなままにせず、しっかり確認しながら進めることです。
この記事では、まず平野に関する用語を整理し、洪積台地とは何かを説明します。河岸段丘は洪積台地に分類されることが多く、小地形の中でも形成過程が最も分かりづらいと思われる地形です。そこで河岸段丘の形成過程と土地利用をやや詳しく説明し、続いて台地の形成過程と土地利用を扱います。
平野に関する用語の整理
「平野」に関する用語は分類がごちゃごちゃしているので、ここで整理しておきます。
侵食平野と堆積平野
平野は、大きく「侵食平野」と「堆積平野」の2つに分類されます。侵食平野とは、削られることで平らになった土地のことです。「安定陸塊」の回で登場した準平原や構造平野が、これに該当します。
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もう一つの堆積平野は、土砂が積もって平らになった土地のことです。この堆積平野は、さらに「沖積平野」と「洪積台地」に分けられます。
沖積平野と洪積台地
沖積平野とは、川によって運ばれた土砂が積もってできた土地です。前回の授業で扱った谷底平野、扇状地、氾濫原、三角州などが該当します。約1万年前から現在までを「沖積世」といい、この沖積世に形成された平野であるため「沖積平野」と呼ばれます。
もう一つの堆積平野が、今回のテーマである洪積台地です。教科書によっては載っていない古い言葉ですが、入試では今でも問われることがあります。おさえておきたい単語の一つです。
沖積世の前、今から約250万年前から1万年前くらいまでを「洪積世」といいます。同じ時代を、最近では「更新世」と呼ぶことが多くなっています。この洪積世に、当時の沖積平野だった場所、つまり当時の谷底平野や扇状地などが隆起してできた地形があります。「洪積世に高くなってできた場所」ということで、これを「洪積台地」といいます。

洪積台地は、現在の沖積平野よりも一段高い場所になっています。その具体例が、この記事で説明する河岸段丘や台地です。
沖積平野も洪積台地もどちらも堆積平野で、川が運んだ土砂でできた点は共通しています。違いは、沖積平野が川の最近つくった場所で、洪積台地は川が昔つくった平野が隆起して一段高くなった場所だという点です。ここでいう「最近」とは、数百年や数千年というスケールのことです。

「沖積」と「洪積」、漢字が似ていて頭の中で混ざってしまいそうです。

「沖積は今の川がつくった低い土地、洪積は昔の平野が持ち上がった高い土地」と、高さとセットで覚えるといいよ。昔の平野は、持ち上がったり、まわりが削られたりして高くなったんだ。
河岸段丘の形成過程と土地利用
河川の周辺が階段状になっている地形を、河岸段丘といいます。河岸段丘が見られる場所として日本で最も有名なのが、群馬県北部の沼田市周辺です。関越自動車道で東京都から新潟県へ向かう途中にあたります。
階段の横にあたる平らな部分を段丘面、階段の縦にあたる急な斜面の部分を段丘崖といいます。沼田市周辺の写真で、段丘面と段丘崖の並び方を確かめておきましょう。

この地形がどのように形成されるのかを、順に説明します。河岸段丘は、次の4つのステップを繰り返すことで形成されます。
- ステップ1:谷底平野の形成(河川の側方侵食)
- ステップ2:土地の隆起または海水面の低下
- ステップ3:河川の下方侵食
- ステップ4:一段低い谷底平野の形成
ステップ1:谷底平野の形成
山の間を川が流れていると、土砂がたまって谷底平野が形成されます。谷底平野は「こくてい平野」とも読み、前回の授業で説明した地形です。ここで注目してほしいのは、谷底平野の幅は、そこを流れている川そのものの幅よりもずいぶん広いという点です。
その理由は、谷底平野では川が場所によって、あるいは時によって流れる位置を変え、ぐにゃぐにゃと蛇行しながら側面を削ってきたからです。これが、ステップ1の「河川の側方侵食」です。曲がって流れる川では、カーブの外側ほど水がぶつかり、削る力が強くなります。そのため蛇行する幅がどんどん広くなり、谷底平野は成長していくという性質があります。

実際の谷底平野を航空写真で見ると、イメージがつかみやすくなります。次の写真の川は、谷底平野の上を大きく蛇行して流れています。

この川をよく見ると、山にぶつかっている場所もあれば、広い河原ができている場所もあります。例えば川のカーブの外側が山にぶつかっている場所では、その山が削られ、いずれ崩れるかもしれません。すると川のカーブがやや下流に移動し、それまで川が流れていた部分は陸地になります。こうしたことを繰り返しながら、川の流れが十分弱くなるまで谷底平野は広くなっていきます。
ステップ2・3:土地の隆起・海水面の低下と下方侵食
谷底平野が形成された後、河岸段丘ができるための次のステップは、下方侵食が起こることです。下方侵食とは、川が下に削る力がそれまでより強くなり、以前より深く削るようになることです。では、何が起こると川の下方侵食力が高まるのでしょうか。その答えが、土地の隆起、もしくは海水面の低下です。
例えば、川が流れている土地が盛り上がると、すべり台の傾斜がきつくなるのと同じように、川の流れが速くなります。流れが速くなれば、川が川底を削る力も強くなり、下方侵食が進みます。
気候の変化などによって海水面が下がることでも、同じ効果があります。海水面と川の上流の流れは、関係がないように思えるかもしれません。しかし海水面が下がれば、河口付近で川の勢いが増し、深く削られるようになります。すると、そこより上流も深く削られることが繰り返され、上流部の川の流れにも影響が及ぶのです。
このように、土地の隆起と海水面の低下は、どちらも河川の下方侵食力を強くします。
ステップ4:一段低い谷底平野の形成
川が下に深く削るようになると、そこから再び川が側面を侵食していきます。こうして一段低い位置に新たな谷底平野がつくられ、地形が階段状になるというわけです。ステップ1〜4の流れを、模式図で確かめておきましょう。

この形成過程が理解できれば、河岸段丘では、上の方の段丘面ほど年代が古いということがすぐに分かります。

いちばん高いところにある段丘面がいちばん古いというのは、ちょっと意外でした。

川は削り下げながら、新しい谷底平野を一段下につくっていくからね。上から順に古い、と覚えておこう。
河岸段丘の土地利用
段丘崖は急斜面であるため、あまり利用されていません。航空写真では森林に見え、地形図では針葉樹林や広葉樹林の地図記号が並びます。
一方で、段丘面は平らなので、人間の生活の場としてよく利用されています。上の方の段丘面は水が得にくいため、果樹園や畑になっていることが多く、戦前であれば桑畑も多くみられました。一番下の段丘面、つまり谷底平野は水が得やすいので、水田になっていることが多い場所です。ただし一番下の段丘面は、水害の危険性も大きい場所です。

台地の形成過程と土地利用
続いて、もう一つの洪積台地である「台地」を取り上げます。「台地」という言葉そのものは、周りの土地よりも一段高くなっている土地を指します。「台地」と「段丘」は、地形学的には全く同じ意味です。それでもここで台地を扱うのは、日本の台地には洪積台地に分類されるものが多いためです。
ここで扱う台地は、洪積世にできた扇状地や三角州が隆起し、そこが川で削られて、残った場所が台のようになったものです。代表例は、東京都西部の武蔵野台地や、千葉県北部の下総台地です。武蔵野台地は隆起扇状地、下総台地は隆起した浅い海底に相当します。
台地は、その場所だけが盛り上がってできたわけではありません。海水面が下がったり土地が隆起したりした結果、川が地表を削り、川沿いの標高が下がりました。相対的に削られなかったところが、台のように残ったのです。
ただし、台地はきれいなテーブルのような形で残っているわけではありません。地表面は雨水によって侵食されるため、台地の先端部はアメーバのような形になっていることが多くあります。
台地の土地利用
台地を模式的に描くと、台地の上の面は「台地面」、斜面の部分は「台地崖」、下の面は「崖下(がいか)」と呼ばれます。

では、人が住みやすい場所はどこでしょうか。答えは「崖下」です。台地はもともと、河川が運搬した土砂が堆積した土地が隆起した場所なので、基本的に水はけがよい場所です。そのため台地面では水が得にくく、集落の立地は遅れ、畑などに使われます。
一方で、台地の崖下では台地を通った水が湧き出るため、水が得やすく、集落が立地しやすい場所になりました。実際に千葉県の下総台地をGoogle Earthで見ると、台地のへりの崖下に集落が集中していることが分かります。

ただし、例外的に台地面に集落が立地することもあります。それは、台地の中に地下水がたまっている宙水がある場所です。こうした場所では宙水を利用して、台地面にも集落が立地します。

台地の上は水はけがよいのに、崖下では水が湧いてくるのですね。

台地面でしみこんだ水が、地下を通って崖下で顔を出すんだ。水の通り道をイメージすると、集落の場所も覚えやすいよ。
この記事の内容を確認する問題に挑戦して、理解を定着させましょう。全10問・約3分
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