はい、皆さんこんにちは。
高校地理の授業動画、「世界の気候」第7回は「A気候(熱帯)の自然と暮らし」です。
熱帯の定義や分布、熱帯雨林やサバナなどの植生、ラトソルという土壌、焼畑農業やプランテーション農業などの生活の様子を解説していきます。
「A気候って、どんな場所なの?」 ということで、 今回の動画から、ケッペンの各気候区分を 一つずつ詳しく見ていきたいと思います。
熱帯の定義と分布
熱帯の定義
では先ず、熱帯の定義を再確認しましょう。
熱帯とは、最寒月平均気温、 最も寒い月の平均気温が18度以上という場所でした。
18℃というのは東京だと10月の平均気温くらいですので、 熱帯といっても、場所によっては、それなりに涼しい時期もあります。
低緯度地域に分布するため、季節による気温の変化は小さいのですが、 一日の中での気温の変化は大きく、昼間は暑くても、 夜には大きく気温が下がって寒いくらいになります。 そのため、気温の年較差よりも日格差の大きな気候です。
そして熱帯は、雨の降り方でさらに3つの気候区に分けられます。
一つ目は、一年を通して降水量が多い、Af気候(熱帯雨林気候) 二つ目は、弱い乾季のあるAm気候(熱帯モンスーン気候) 三つ目は、雨季と乾季がはっきり分かれるAw気候(サバナ気候)です。 この3つを判定するグラフがこちらです。
最小雨月降水量、一番雨の少ない月の月間降水量が 60mmより多ければAf気候、60mmを下回ればAwもしくはAm気候となります。
3つの雨温図を比べてみましょう。
いずれも気温は年中高いのですが、 降水量を表す棒グラフには大きな違いがみられます。 Af気候では一年中降水が見られるものの、 Am、Aw気候では、降水量の多い時期と少ない時期が見られます。 とは言え、Am気候は「弱い乾季のある熱帯雨林気候」とも呼ばれ、 参考書によっては、AmをAfに含めている場合もあります。
そのため、A気候は、年中雨が降るか、雨季と乾季があるかの、 大きく2つ、と考えて構いません。
熱帯の分布
続いては、A気候の分布です。
大気大循環の動画の後半、「雨季と乾季の生じる仕組み」で見た こちらの図を思い出して下さい。
![大気大循環により雨季と乾季の生じる仕組み](https://www.geography-lesson.com/wp-content/uploads/2021/01/07.-A気候(熱帯)の自然と暮らし-1.jpg)
熱帯収束帯や亜熱帯高圧帯の位置が季節によって変わるため、 赤道付近は、年間を通して熱帯収束帯の影響で雨が多いのですが、 そこから離れると、雨季と乾季が生じるのでした。
これを気候区分に当てはめて考えると、 赤道付近は、年中多雨のAf気候、 その両側に、AmやAw気候が分布するイメージです。
![大気大循環により雨季と乾季の生じる仕組み](https://www.geography-lesson.com/wp-content/uploads/2021/01/07.-A気候(熱帯)の自然と暮らし-5.jpg)
このモデルが、実際の世界地図上では、以下のようになります。
![熱帯の分布 - ケッペンの気候区分](https://www.geography-lesson.com/wp-content/uploads/2021/01/07.-A気候(熱帯)の自然と暮らし-2.jpg)
赤道の近くはAf気候、その周りにAw気候やAm気候が分布していて、 ほぼ北回帰線から南回帰線の間に熱帯は収まっています。
熱帯では、日中の強い日差しによって地面があたためられて 上昇気流が発生し、雲を形成するため、 激しい雨が短時間にざっと降るスコールという現象が見られます。 日本で夏にみられる「夕立ち」が、年間を通じて見られるようなものです。
Am気候は主に南アジア〜東南アジアに分布していますが、 この地域は季節風(モンスーン)の影響を強く受けることから、 Am気候は熱帯モンスーン気候と呼ばれます。
熱帯の植生と土壌
続いては、熱帯の植生と土壌です。
全体像はこのように整理できます。
![熱帯の植生と土壌](https://www.geography-lesson.com/wp-content/uploads/2021/01/07.-A気候(熱帯)の自然と暮らし-6.jpg)
植生については、Af, Aw, Amでそれぞれ、熱帯雨林、サバナ、雨緑林、 さらに海岸付近ではマングローブ林という異なる植生が見られますが、 土壌は、共通してラトソルという土壌が見られます。 順番に説明していきます。
熱帯雨林気候(Af)の植生:熱帯雨林
先ずはAf気候の植生、熱帯雨林。 Google Earthを使って、アマゾンの熱帯雨林に行ってみます。
このようにたくさんの木が鬱蒼と生い茂っています。
Af気候は気温が高く、降水量も多いため、 植物は一年中光合成を活発に行える場所です。 そのため、樹木は太陽の光を求めて競い合うように上へ上へと伸びます。 種類によっては、木の高さがなんと50m以上、 20階建てのビルほどの高さになる樹木もあります。 大きな幹が倒れないように、板根と呼ばれる三角形の板状の根で しっかりと体を支えています。
高い樹木が何層にも重なるため、 熱帯雨林の地面は昼でも薄暗く、下草はあまり生えていません。
また、植物だけでなく、動物や昆虫などの生態系も大変豊かで、 地球上の生き物の約半分は、熱帯雨林に住んでいるとも言われています。
高温多湿で微生物の働きも活発なため、 落ち葉や動物の死体はどんどん分解されて、土として残りません。 そのため、意外かもしれませんが、熱帯雨林は土壌が薄くて栄養が少なく、 一度森林が伐採されてしまうと、 薄い土壌が雨で流されてしまい、再生は困難と言われています。
この熱帯雨林、場所によって呼び方が異なり、 南米大陸ではセルバ、アフリカ大陸や東南アジアではジャングルと呼ばれます。
サバナ気候(Aw)の植生:サバナ
続いて、Aw気候の植生、サバナ。 今度はアフリカ大陸のタンザニアに行ってみます。
![サバナ気候の様子(乾季)](https://www.geography-lesson.com/wp-content/uploads/2021/01/img_2375-1024x683.jpg)
Aw気候では雨季と乾季が分かれるため、 多くの植物は雨の降らない乾季には枯れてしまいます。 そのため森林は形成されず、アカシアやバオバブなど 乾燥に強い木々がまばらに生える「疎林」となり、 雨がたくさん降る雨季には、背丈の高い長草草原が広がります。 このような植生が、サバナと呼ばれます。
雨季のサバナに広がる長草草原の様子
![サバナ気候に雨季に広がる長草草原](https://www.geography-lesson.com/wp-content/uploads/2021/01/img_2377-1024x683.jpg)
アフリカのサバナには、ゾウやキリン、カバやシマウマなど、 たくさんの大型野生動物が暮らしています。
このサバナ気候の草原も、場所によって呼び方が異なります。
![リャノ、カンポ・セラード、グランチャコ](https://www.geography-lesson.com/wp-content/uploads/2021/01/07.-A気候(熱帯)の自然と暮らし-7.jpg)
特に南米大陸で呼び方が分かれており、 オリノコ川周辺ではリャノ、 ブラジル高原周辺ではカンポ、あるいはカンポセラード、 パラグアイからアルゼンチンにかけてはグランチャコと呼ばれています。
熱帯モンスーン気候(Am)の植生:雨緑林
Am気候の植生は、参考程度で構いませんが、 雨緑林と呼ばれます。
熱帯雨林と似ていますが、乾季には葉が落ちるため、 落葉広葉樹と呼ばれる木々が混ざっていて、 地面には光が入り、下草やつる植物が生えて歩きにくくなっています。
参考:雨緑林の画像と説明(Britannica ‘Monsoon Forest’)
熱帯の汽水域の植生:マングローブ林
植生の最後に、熱帯地域の海岸線や河口付近で見られるマングローブ林について触れたいと思います。 汽水域といって、川からの淡水と海の海水が混ざる場所に生えていて、 マングローブという名前の植物があるわけではなく、 このように水中に根が刺さったような形をしている植物を総称してマングローブといいます。
暖かい海で見られ、日本でも沖縄にはたくさんのマングローブ林が見られます。 この独特の形が、魚たちの住処になっていたり、 砂が流れ出るのを防いだりと、 生態系の維持に重要な役割を果たしています。
熱帯の土壌:ラトソル
植生に続いては、土壌です。 熱帯では、共通してこのように赤っぽい土が見られます。
こうした土壌を、ラトソルといいます。
熱帯地域は降水量が多いため、 土の中の栄養分が雨に溶けて流されてしまいます。
この現象を、溶脱といいます。
溶脱が起きた結果、熱帯の土壌は、水に溶けにくい 鉄分やアルミニウムなどしか残されない栄養の少ない土壌、 肥沃度が低く、あまり農業には適さない土壌となります。 そして、残った鉄分が酸化した色により、つまりは鉄のサビの色により、 赤色を呈します。 また、詳しい化学的なメカニズムは省略しますが、 溶脱によって、土壌中に含まれるアルカリ性の成分である カルシウムイオンやマグネシウムイオンなどが流れ出るため、 ラトソルは、酸性を示します。
- 肥沃度は低い
- 色は赤色
- 酸性
これらが、熱帯の土壌、ラトソルの特徴です。
熱帯の人々の暮らし
最後のパートは、熱帯の人々の暮らしです。 住居、農業と食文化、という2つの視点で見ていきます。
熱帯の住居
まずは住居。 熱帯雨林気候とサバナ気候では、自然環境の違いから異なる住居が見られます。
高床式住居
![](https://www.geography-lesson.com/wp-content/uploads/2021/01/img_2382.jpg)
熱帯雨林気候では、このように高床式の住居がよく見られます。
雨が多くて蒸し暑い気候のため、高床式にすることで風通しを良くしています。 屋根や壁の材料には、熱帯で栽培が盛んなバナナの葉がよく使われています。
土づくりの住居
一方サバナ気候では、このように土でできた家がよく見られます。
この写真は、私がアフリカのザンビアという国で働いていた時の写真です。
家の建築に使える木材が生えていない、という理由もありますし、 強い日差しを、断熱性の高い土壁で防ぐため、という理由もあります。
ラトソルは、水を加えてこねると簡単にレンガが作ることができます。
また、ケニアなどでは、見た目はほとんど同じですが、 土に牛糞を混ぜて家を作る場合もあります。 牛が食べた植物の繊維が含まれていて丈夫ですし、 糞といっても、乾けば臭いは全くありません。
熱帯の農業
続いて農業と食文化。
熱帯には、アフリカや東南アジアなど、 いわゆる発展途上国の国が多いのですが、 こうした熱帯の国々の農業の特徴は、 自給的農業と、プランテーション農業という、 全く違うタイプの農業が、同じ国の中でどちらも存在していることです。
詳しくはまた、「農業」の単元で再登場しますが、 自分たちが食べるものを作る小規模な農業を自給的農業、 輸出してお金にするために特定の作物ばかりを大量に作る農業をプランテーション農業といいます。
熱帯の自給的農業
![](https://www.geography-lesson.com/wp-content/uploads/2021/01/img_2391.jpg)
熱帯の自給的農業といえば、焼畑農業です。
そこに生えている草や木を燃やして、その草木灰を肥料として使う農業です。 草木の灰というのはアルカリ性ですので、 灰を土の中に混ぜることで、土壌の栄養を補えるだけでなく、 酸性であるラトソルを化学的に中和することもできる方法です。
焼畑農業では、キャッサバ、タロイモ、ヤムイモなどのイモ類や、トウモロコシ、バナナなどが栽培されています。
東南アジアやインド、マダガスカルでは 主にコメが作られています。
日本で見られるような、田んぼに水をはって作る「水稲」以外にも、 山の斜面や畑に直接稲を植える「陸稲(りくとう/おかぼ)」という種類も多く栽培されています。
![ネパールの山間地で栽培される陸稲](https://www.geography-lesson.com/wp-content/uploads/2021/01/img_2394.jpg)
熱帯のプランテーション農業
![ブラジルのコーヒープランテーション](https://www.geography-lesson.com/wp-content/uploads/2021/01/img_2401-1024x681.jpg)
![熱帯のプランテーション農業](https://www.geography-lesson.com/wp-content/uploads/2021/01/07.-A気候(熱帯)の自然と暮らし-4.jpg)
一方で、同じ熱帯の農業でも、プランテーション農業では、 食料としてではなく、海外に売るための商品として、広大な農園で一種類だけの作物を大量に作って輸出しています。
このような作物のことを、商品作物といいます。
商品作物の代表例は、コーヒー、カカオ、天然ゴム、油ヤシ、お茶、などです。
もともとその国で作っていたものではなく、 大量に生産するために、他国から持ち込まれたものがほとんどです。 こうしプランテーション農業に多くの労働力や農地が使われた結果、その国の食糧生産が不足したり、自然環境が破壊されたりといった問題も起こっています。
今回の動画の確認問題
はい、今回の動画は以上となります。
確認問題にチャレンジしたい方は以下にアクセスしてください。
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