D,E気候(亜寒帯、寒帯)の自然と暮らし寒い地域ではどのような場所に分布し、どんな生活の特徴があるのだろう?
D気候は最寒月の気温で、E気候は最暖月の気温で決まります。2つの気候の定義と分布から、タイガやツンドラの植生、ポドゾルなどの土壌、トナカイの遊牧や高床式の住居といった暮らしの工夫までを、順に整理します。
この記事でわかること
- D気候とE気候の定義と、Df・Dw・ET・EFの4つの気候区への分け方を説明できる
- D気候とE気候の分布と、Dw気候で冬の寒さが特に厳しくなる理由を説明できる
- タイガ・ツンドラ・ポドゾル・ツンドラ土の特徴と、寒い地域の農牧業や暮らしの工夫を説明できる
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ケッペンの気候区分のうち、前回まではA気候・B気候・C気候を見てきました。今回は残る2つ、D気候とE気候をまとめて取り上げます。まずD・E気候の定義と分布、次に植生と土壌、最後に暮らしという順番で解説します。
D気候とE気候の定義と分布
最初のパートでは、D・E気候の定義と分布を見ていきます。
D気候とE気候の定義
D気候は亜寒帯もしくは冷帯とよばれ、最寒月平均気温が−3℃未満の場所と定義されます。一方、E気候は寒帯とよばれ、最暖月平均気温が10℃未満の場所と定義されます。D気候は最寒月、E気候は最暖月の気温で判定する点に注意しましょう。
つまり、冬がどんなに寒くても、夏の気温が10℃を超えればE気候ではなくD気候になります。夏の平均気温が10℃を超える月があるかどうかは、樹木がどうにか生きられて森林ができるかどうかの、一つの境目になるからです。そのため、D気候は樹木のある樹林気候、E気候は樹木のない無樹木気候となります。

D気候とE気候の区分
D気候とE気候は、それぞれさらに2つの気候区に分けられます。D気候のうち、年間を通して降水が見られる場合は、年中湿潤を表すfをつけてDf気候(亜寒帯湿潤気候)とよびます。冬に降水が少なくなる場合は、冬季乾燥を表すwをつけてDw気候(亜寒帯冬季少雨気候)とよびます。
E気候は、降水ではなく気温で分類されます。最暖月平均気温が0℃以上10℃未満であればET気候(ツンドラ気候)、0℃未満であればEF気候(氷雪気候)です。ET気候のTはツンドラのT、EF気候のFは雪や氷を表すフロストという単語のFで、どちらも大文字で書きます。

D気候の分布
D気候の分布を世界地図で確かめると、ロシアやカナダはほとんどがD気候になっています。北アメリカ大陸では五大湖のやや南まで、ユーラシア大陸では東ヨーロッパから大陸のずっと東端まで、北海道も含めてD気候が広がっています。

なお、D気候は北半球にしか存在しません。南半球では、D気候に相当する緯度の場所にほとんど陸地がないため、D気候になる場所がないのです。
D気候の大半は、地図で薄い紫色に塗られたDf気候(亜寒帯湿潤気候)で、年間を通して降水があります。これは、D気候が分布する緯度では、年間を通して亜寒帯低圧帯の影響が大きいためです。

ただし、ロシアの東部、シベリアとよばれる地域だけは地図で濃い紫色になっており、Dw気候(亜寒帯冬季少雨気候)が分布しています。これは、このあたりでは冬にシベリア高気圧という高気圧が発達するため、冬の降水量が少なくなるからです。

Df気候とDw気候の違いと寒極
Df気候とDw気候の雨温図を比べると、Dw気候のほうが冬の気温が大きく下がっており、年較差の大きな気候であることがわかります。Dw気候が分布する東シベリアは、海から遠い大陸の内部にあります。冬は雲の少ない晴れた日が続き、地面の熱が逃げやすいため、冬の気温がぐっと下がるのです。

気温が特に低くなる場所を寒極といいます。冬の冷え込みが厳しいため、北半球の寒極はE気候ではなく、Dw気候の地域にあるオイミャコンになります。オイミャコンは世界一寒い村としてギネスブックにも認定されており、1月の平均気温はなんと約−40℃です。想像もできないような寒さですが、過去の最低気温は約−70℃ともいわれています。

1月の平均気温が約−40℃の村に、人が暮らしているなんて驚きです。

想像しにくい寒さだよね。こうしたとてつもなく寒い土地での暮らし方は、記事の最後のパートで取り上げるよ。
E気候の分布
今度は、D気候の分布にE気候の分布を重ねてみます。水色で示されたET気候(ツンドラ気候)は、北アメリカ大陸の北側やユーラシア大陸の北極海沿岸など、D気候のさらに高緯度側に位置しています。また、ヒマラヤ山脈やアンデス山脈など、標高が高くて気温が下がる場所にもET気候は分布しています。

濃い青色で示されたEF気候(氷雪気候)は、南極大陸とグリーンランドの内陸部にしか見られません。EF気候の地域は雪と氷に覆われた世界で、基本的に人間は住めません。

E気候の雨温図を見ると、年間を通して気温が低いことがわかります。ただし夏でも気温が上がらないため、夏と冬の気温の差である年較差は、E気候よりもD気候のほうが大きくなります。

D気候とE気候の植生と土壌
二つ目のパートは、D・E気候の植生と土壌です。
D気候の植生(タイガ)
D気候では、タイガとよばれる針葉樹林帯が形成されます。夏には暖かくなるといっても、冬の気温が非常に低いため、クリスマスツリーにも使われるモミの木など、寒さに強い一部の樹木しか生きられません。
そのため、熱帯や温帯のようにたくさんの種類の樹木は見られず、同じ種類の木ばかりの森林が広大に広がっています。このような単一樹種の針葉樹林帯をタイガといいます。

E気候の植生(ツンドラ)
ET気候では樹木は生えません。ただし短い夏の間だけ、地表の雪や氷がとけて、湿地のような湿った地面が現れます。そこにコケ類や地衣類といった、丈の短い草のようなものが生えます。このような植生をツンドラといいます。
一方、EF気候は1年中雪と氷に覆われるため、植生はありません。

D気候の土壌(ポドゾル)
D気候の土壌はポドゾルとよばれます。ポドゾルは灰白色と表現される白っぽい色をしていて、強い酸性で肥沃度の低い土です。少し発展的な補足になりますが、ポドゾルがこのような性質を示すのには、気温が低いことと、そこに生える植物の種類が関係しています。
D気候のように気温が低いと、微生物の働きも鈍く、地面に落ちた動植物の分解があまり進まなくなります。すると地面に栄養がたまらないので、肥沃度が低い土壌になります。
加えて、気温が低いと水分がなかなか蒸発しないため、土の中の水に溶けやすい物質は、だんだん下のほうへしみ込んで流されていきます。このように、水によって土の成分が流されてしまうことを溶脱といいます。溶脱は、熱帯のレッスンで扱ったラトソルでも見られた現象です。ラトソルでは土砂降りの雨によって溶脱が起きましたが、ポドゾルでは気温が低くて水分が蒸発しないために溶脱が起きます。
色にも違いがあります。ラトソルが赤くなるのは、水に溶けない酸化鉄やアルミニウムが地表に残るためでした。しかしポドゾルでは、針葉樹の落ち葉が分解される際に生じる酸が酸化鉄やアルミニウムを溶かし、地表から流してしまうので、色が抜けて白っぽくなります。
そのため、ポドゾルを掘っていくと、上のほうは白っぽいのに、下のほうでは流されてきた酸化鉄やアルミニウムがたまった赤っぽい土が現れます。そして、この酸の影響で、ポドゾルは酸性を示すというわけです。


ラトソルもポドゾルも溶脱が起きるのに、色は赤と白で正反対なんですね。

いいところに気づいたね。溶脱の原因と、何が地表に残るかを並べて比べると、2つの土はまとめて覚えられるよ。
E気候の土壌(ツンドラ土)と永久凍土
ET気候では、ツンドラ土という土壌が分布します。ET気候の植生がツンドラでしたが、その下に見られる土壌がツンドラ土です。夏に生えるコケ類や地衣類もやはり低温で十分に分解されないため、ツンドラ土もポドゾルと同じく、肥沃度が低い酸性の土壌となります。
そして、D気候の北部やE気候では、地下には1年中凍ったままの永久凍土が見られます。なお、EF気候(氷雪気候)には植生がないので、土壌もありません。

D気候とE気候の暮らし
三つ目のパートは、D・E気候の暮らしです。
D気候の農牧業
D気候には、夏の気温によって農業ができる場所とできない場所があります。D気候のうち南側の地域は、夏の気温が比較的高くなるため、農業ができるD気候です。この地域は、乾燥帯のレッスンでも登場した黒色土という肥沃な土壌が分布する地域とも重なります。そのため、小麦などの穀物が大規模に栽培されています。

それよりやや気温の下がる場所では、混合農業や酪農が営まれています。一方で、D気候の中でも北側の地域は、夏でも気温があまり上がらず、農業ができないD気候になります。こうした場所では、広大な森林を生かした林業が重要な産業になっています。

関連レッスン
E気候の農牧業
E気候は寒すぎるため、農業はできません。では、人々はどのように暮らしているのでしょうか。EF気候には人間は住めませんが、ET気候(ツンドラ気候)の地域では、トナカイを飼ったり、アザラシや魚をとったりして暮らしています。

トナカイは、寒い地域ではとても重要な家畜です。肉やミルクが食料になるほか、毛皮は衣服や住居の材料にもなります。そりを引いて荷物も運んでくれます。また、寒さの厳しい環境でも、夏には木の実やコケを食べ、冬にはひづめで雪の下の地衣類を掘って生きることができます。
えさを求めて家畜とともに移動する生活を遊牧といいます。アザラシの狩猟やトナカイの遊牧をして暮らす民族は、北アメリカ大陸ではイヌイット(エスキモー)、北欧ではサーミとよばれています。

なお、完全に余談ですが、イヌイットの伝統的な食べ物にキビヤックというものがあります。アザラシのおなかを開いて海鳥をたくさん詰め込み、おなかを縫い合わせてから、地面の中に何か月も埋めておきます。すると海鳥の内臓が発酵して液体状になります。こうしてどろどろになった内臓を、海鳥のお尻から吸って食べるのです。
調理法だけを聞くと、食べるのになかなか勇気がいりそうですが、味はとてもおいしいそうです。火を通さないのでビタミンも壊されず、寒い地域で栄養をバランスよくとるために生み出された知恵といえるでしょう。

アザラシの中で海鳥を発酵させるなんて、思いもよらない食べ方です。

驚くよね。その土地で手に入るものだけで栄養をとろうとすると、こういう工夫にたどり着くんだろうね。ちなみに、キビヤックは漫画『もやしもん』の最初の方にも登場します!
寒い地域の暮らしの工夫
最後に、寒い地域の暮らしの工夫をいくつか紹介します。地面に永久凍土が広がる地域では、高床式の住居が見られます。家が地面に接していると、暖房の熱で永久凍土がとけて家が傾いてしまうため、それを防ぐための工夫です。凍った地面の深いところまで柱を立て、地面がとけないように高床式にしています。

また、寒い土地ならではの自然災害もあります。ロシアには、レナ川やエニセイ川といった、南北に非常に長い川が流れています。冬には川が凍って、川の上を道路のように車で走ることもできます。
ところが、春になって気温が上がると、上流にあたる南のほうではもう川がとけているのに、下流にあたる北のほうはまだ凍ったまま、ということが起こります。すると、凍った川で上流からの水がせき止められてしまい、下流ではしばしば大洪水が起こります。

この記事の内容を確認する問題に挑戦して、理解を定着させましょう。全10問・約3分
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