海岸の小地形(リアス海岸、フィヨルドなど)海岸にはどのような特徴的な地形が形成されるのか
海岸に見られる小地形は、でき方によって砂浜海岸・沈水海岸・離水海岸の3つに分けられます。分類ごとに地形のでき方と具体例を確かめながら、港や養殖業、都市や集落との関わりも見ていきます。
この記事でわかること
- 海岸の小地形を砂浜海岸・沈水海岸・離水海岸に分類し、それぞれに属する地形を挙げることができる
- 砂嘴・砂州・潟湖・沿岸州・陸繋島のでき方と、その具体例を説明できる
- リアス海岸とフィヨルド、三角州と三角江の違いと、海岸平野・海岸段丘のでき方を説明できる
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河川がつくる小地形に引き続き、今回は海岸に見られる小地形を解説します。海岸ではどのような小地形が見られるのかを、でき方ごとに整理していきます。
海岸にみられる小地形の分類
海岸に見られる小地形は、でき方によって大きく3つに分類できます。それが砂浜海岸、沈水海岸、離水海岸です。それぞれの分類の中に、さらにいろいろな地形が含まれています。

この記事では、この3つの分類の順に、それぞれの地形を説明します。
砂浜海岸
砂浜の海岸と聞くと、海水浴に行くビーチのような景色が思い浮かぶかもしれません。確かに、それも砂浜海岸の一種です。ただし地理学で砂浜海岸というときは、海の流れや波によって運ばれてきた砂が堆積してできた地形を意味します。
波が押したり引いたりを繰り返して砂を積もらせたり、海の流れが砂を運んできたりしてつくられた地形のことです。具体的には、砂嘴、砂州、潟湖(ラグーン)、沿岸州、陸繋島などが砂浜海岸に含まれます。下の模式図は、これらの地形の位置関係を1枚にまとめたものです。

砂嘴
最初に取り上げるのは砂嘴(さし)です。「嘴」は「くちばし」という漢字です。積もった砂が陸地から伸び、先端が鳥のくちばしのように内側に曲がっている地形を砂嘴といいます。
沿岸を流れる海流のことを沿岸流といいます。この沿岸流によって砂が運ばれると、砂が海岸線に沿って堆積していき、砂嘴が形成されます。具体例としては、北海道の野付半島や静岡県の三保の松原が有名です。

砂嘴がある場所では、外側からの波を砂嘴が防いでくれます。そのため砂嘴の内側は波が穏やかで、船が入ってきやすい港になります。日本を代表する港の一つである清水港は、砂嘴である三保の松原に守られるような位置にあります。
砂州
砂嘴が発達し、湾の対岸にくっつくくらいまで細長く伸びたものが砂州(さす)です。鳥取県の弓ヶ浜や京都の天橋立などが、その具体例です。

潟湖(ラグーン)
伸びた砂州によって海が分断されると、新しく湖がつくられます。この湖を潟湖(せきこ)、またはラグーンといいます。代表例は、北海道のサロマ湖や関東の霞ヶ浦などです。霞ヶ浦は琵琶湖に次いで日本で2番目、サロマ湖は3番目に大きな湖です。

沿岸州と浜堤
砂州が沿岸から離れたところに形成されたものは、沿岸州と呼ばれます。波が砂を積もらせて高くなった場所が、海面の上に出ることで沿岸州は形成されます。
さらに海水面が下がって全体が陸地になると、この高くなった場所は浜堤(ひんてい)と呼ばれる微高地になります。微高地とは、周囲よりもちょっとだけ高い土地のことで、浜堤はそうした土地として利用されます。浜堤は、この後の海岸平野の項でもう一度登場します。

陸繋島とトンボロ
最後は陸繋島(りくけいとう)です。「繋」は「つなぐ」という字で、砂州によって陸地とつながった島のことを陸繋島といいます。また、陸地と陸繋島をつなぐ砂州のことを、陸繋砂州またはトンボロといいます。代表例は北海道の函館山です。

函館市は、このトンボロの上に発達した都市です。市街地のあるトンボロは平坦で、陸繋島である函館山は標高が約300メートルあります。そのため山の上からは、眼下に函館市の夜景を一望できます。「100万ドルの夜景」ともいわれる非常に有名な夜景スポットですが、美しい夜景の背景には、このような地形的特徴もあるのです。

函館山の夜景が有名なのには、地形の理由もあったんですね。

そうなんだ。地形を知っていると、観光地の見え方も変わってくる。旅行先でも地形を探してみて。
沈水海岸
分類の2つ目は沈水海岸です。水に沈んだ海岸と書いて、沈水海岸と読みます。海水面が上昇し、それまで陸地だった場所が海の下に沈むことで形成される地形を指します。具体例として、リアス海岸、フィヨルド、エスチュアリーの3つを取り上げます。
リアス海岸
リアス海岸とは、もともと山だった場所が海に沈み、ギザギザした海岸線になっている場所のことです。川が削った谷のことを、V字谷といいました。つまりリアス海岸は、V字谷が海に沈んで形成された地形ともいえます。

リアス海岸の入り江は山に囲まれているため波が穏やかで、水深もあります。そのため、牡蠣や真珠、わかめなど、さまざまな養殖業が盛んです。
一方で、リアス海岸は奥に行くほど狭く、浅くなります。そのため津波が来たときには流れが湾の奥の1か所に集中し、津波が急激に高くなりやすいという危険性があります。2011年3月の東日本大震災では、東北地方が津波で大きな被害を受けました。こうしたリアス海岸の地形的な特徴も、被害が大きくなった一因と考えられています。
具体例としては、東北地方の三陸海岸、若狭湾、志摩半島などがあります。海外では、リアス海岸の名前の由来にもなったスペインのリアスバハス海岸や、朝鮮半島の南部などでも見られます。

リアス海岸の具体例として、三重県志摩半島の英虞湾(あごわん)を Google Earth で確かめます。非常に複雑な海岸線が見られますが、これはもともと山地だった場所が海に沈んだためです。

英虞湾は、真珠の養殖の場所として非常に有名です。山に囲まれて波が穏やかであることに加えて、山から流れてくる水が栄養をたっぷり含んでいます。そのため、真珠の生産に必要なアコヤ貝がよく育ちます。これも、英虞湾が真珠で有名になった理由の一つです。湾内には、アコヤ貝を育てておくためのイカダがたくさん浮かんでいます。
フィヨルド
沈水海岸の2つ目はフィヨルドです。フィヨルドもギザギザした海岸線のことをいいますが、リアス海岸とはでき方やできる場所などが違います。ここでは、リアス海岸と比較しながら説明します。
まずでき方の違いを見ると、リアス海岸は、川が山を削ってできたV字谷が沈んでできたものです。一方、フィヨルドは氷河が山を削ってできた谷です。こうした谷をU字谷といい、フィヨルドはこのU字谷が沈んでできたものです。
でき方が違うので、谷の形も違います。川が削ったV字谷は、アルファベットのVの字のような形をしています。一方、氷河がつくったU字谷は、氷河自身の重さで全体をずるずると削りながらできた谷です。そのため、アルファベットのUのような形になります。
このため、リアス海岸は奥に入っていくほど狭く浅くなるのに対し、フィヨルドは水深が深く、湾の幅が奥まで変わりません。その結果、フィヨルドのほうが、大きな船が奥のほうまで入っていくことができます。
また、フィヨルドは氷河によってできた地形です。そのため、そもそも氷河があったような寒い場所、つまりノルウェーなどの高緯度地方でしか見られません。これに対して、リアス海岸は世界中の広い範囲で見られます。ここまでの違いを表にまとめると、次のようになります。

ノルウェーで見られるフィヨルドを、Google Earth で確かめます。細長く、幅が一定の入り江が、奥のほうまで入り込んでいるのがわかります。

谷に近づいて横から見ると、きれいなUの形に削られています。削られた谷の深さも一定です。両脇を断崖絶壁と氷河に囲まれ、非常に美しい景色が広がる場所がフィヨルドです。

三角江(エスチュアリー)
沈水海岸の3つ目は、三角江、またはエスチュアリーと呼ばれる地形です。河口の部分が大きくラッパ状に開いているものを三角江(エスチュアリー)といいます。

よく似た言葉に三角州がありますが、別物なので注意が必要です。三角州も三角江も、どちらも河口付近にできる地形です。三角州は、川が運んできた土砂が堆積し、その陸地の部分が三角形になったものです。これに対して三角江は、土砂が堆積せず、開いた海の部分が三角形になったものです。

川が運んでくる土砂の少ない場所では、そもそも河口付近に堆積する土砂がありません。そのため、川が広く開いた形になります。
日本では川の流れが急で、川が運ぶ土砂の量が多いため、エスチュアリーは形成されません。逆に、古期造山帯や安定陸塊などを流れる川で、運ぶ土砂の量が少ない場所では、エスチュアリーが発達しやすくなります。
具体例としては、北米大陸のセントローレンス川、南米大陸のラプラタ川、イギリスのテムズ川などがあります。エスチュアリーは平地を流れてきた川が沈んでできるため、周りには広く平らな土地が広がっているという特徴もあります。

土砂が積もっていないので水深が深く、船も入ってきやすくなります。そして、船が入ってきた先には広く平らな土地が広がっています。そのため、エスチュアリーの周りには古くから都市が発達してきました。イギリスの首都ロンドンも、テムズ川のエスチュアリーに発達した都市です。

三角州と三角江、漢字が1文字違うだけなので混乱しそうです。

「州」は陸地、「江」は入り江、つまり水のほう。どちらが三角形なのかを漢字で押さえておこう。
離水海岸
分類の最後は離水海岸です。沈水海岸とは逆に、水から離れた海岸と書きます。海水面が低下し、それまで海の中だった場所が陸地になることで形成される地形を指します。具体例として、海岸平野と海岸段丘の2つを取り上げます。
海岸平野
海岸平野の例としては、なんといっても千葉県の九十九里浜が有名です。Google Earth で近づいてみると、直線的で単調な海岸線が、約50km以上にわたってずっと続いています。

砂浜の部分だけではなく、その後ろに広がる平らな部分も含めて海岸平野といいます。さらに近づくと、海岸線に沿って直線的に集落が並んでいる場所があります。これは納屋集落と呼ばれ、砂浜海岸の項で触れた浜堤の上に形成された集落です。

納屋とは、漁業の道具をしまっておく小屋のことです。この納屋が起源になって形成された集落なので、納屋集落と呼ばれます。
千葉県では、今から約7000年前、縄文時代にあたる頃には、海水面が今よりも2〜3メートル高くなっていました。当時は、下の図の青い部分まで海でした。このように、縄文時代に海が今よりも陸地側に入り込んでいたことを縄文海進といいます。

縄文海進があった頃、海の底には砂がたまって平らになりました。その後、海水面が下がると、海岸線は現在の位置まで沖へ移りました。その結果、昔は海の底だった平らな場所が隆起して陸地になったのが、今の九十九里浜です。

九十九里浜は砂浜なのに、どうして離水海岸に入るんですか?

砂浜だけでなく、後ろの平野ごと昔の海の底が陸になったからなんだ。だから海岸平野として離水海岸に分類される。
海岸段丘
もう一つの離水海岸は海岸段丘です。前回のレッスンで扱った河岸段丘と同じく、海岸段丘も洪積台地に分類されます。
波が打ち付けて陸地を削るところでは、切り立った崖ができます。このような崖を海食崖といいます。そこで海水面が下がると、海底にあった平らな部分が隆起して陸地になります。これを繰り返すことで、海岸にも階段状の地形である海岸段丘がつくられます。
具体例としては、高知県の室戸岬などで海岸段丘が見られます。

この記事の内容を確認する問題に挑戦して、理解を定着させましょう。全10問・約3分
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