大気大循環(雨季と乾季の生じるしくみ)気圧帯の循環が生む風と雨のしくみ
風が吹く仕組みから4つの気圧帯と3つの循環を整理し、貿易風・偏西風・極偏東風の吹く向きや、気圧帯の季節移動が生む雨季と乾季までを解説します。
この記事でわかること
- 気圧の差から風が吹くしくみを説明でき、赤道低圧帯・中緯度高圧帯・亜寒帯低圧帯・極高圧帯がどのように生じるかを説明できる
- 貿易風・偏西風・極偏東風の吹く向きを、緯度による自転の速さの違いとコリオリの力とあわせて説明できる
- 気圧帯が季節によって南北に移動することから、年中多雨・雨季と乾季・年中乾燥という降水パターンの違いを説明できる
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単元「世界の気候」の第2回は、大気大循環と恒常風、そして雨季と乾季です。
前回は気候の三大要素の一つ、気温を見てきました。残る三大要素である風と雨について、ここから数回に分けて見ていきます。この記事では、まずそもそも風はどのような仕組みで吹くのかを確認し、続いて世界全体の風と雨のベースとなる大気大循環という考え方を説明します。
そして、この大気大循環によって引き起こされる、雨季と乾季の生じる仕組みまでを扱います。世界の気候を理解するうえで土台となる内容なので、順を追って読み進めていきましょう。
風の吹くしくみ
世界の風や雨がどのような仕組みになっているのかを考えるために、まずは風の吹く仕組みから確認していきます。
空気というのは、たくさん詰まっているところから、少なくてスカスカしたところに向かって移動します。この空気の移動が風です。
そして、空気がたくさん詰まっているところ、すなわち空気の密度が濃いところは気圧が高い、高気圧と表現されます。
反対に、空気がスカスカしているところ、空気の密度が薄いところは気圧が低い、低気圧と表現されます。

つまり、風は気圧の高いところから低いところに向かって吹きます。
大気大循環とは
大気大循環とは、地球全体での空気の大きな流れのことです。風が気圧の高いところから低いところへ吹くということを意識しながら、この流れを見てみましょう。
赤道付近の上昇気流と赤道低圧帯
まず、赤道付近を見てください。ここは太陽の熱を一番多く受ける場所なので、空気は温められて軽くなり、上空に上っていくため、いつも上昇気流が発生しています。
このような状態を地理学では、赤道付近は1年中上昇気流が卓越すると表現します。卓越とは、それが頻繁に発生するとか、それの影響が大きいという意味で、気候の分野でよく登場する言葉です。
空気がどんどん上空に行ってしまうので、赤道の地表付近は空気の少ない場所、すなわち気圧の低い場所となるので、赤道低圧帯と呼ばれます。
中緯度高圧帯と熱帯収束帯
上空に上った暖かい空気は、高緯度側にも広がっていくのですが、ある程度のところまで来ると、温度が下がって、再び地上に降りてきます。こうして、一度上った空気がまた地面に降りてくるところが、おおむね緯度30度ぐらいのところです。
このあたりは、上空から降りてくる空気の流れ、つまり下降気流が卓越するので、空気のたくさん詰まった高気圧帯となります。そのため、緯度30度付近は、中ぐらいの緯度で高気圧帯ができるところという意味で、中緯度高圧帯、あるいは亜熱帯高圧帯と呼ばれます。
中緯度高圧帯で下降してきた空気は、地面にぶつかって両側に分かれます。そして空気は、気圧の高いところから低いところに、空気のたくさんあるところから少ないところに移動するのでした。
ということで、分かれた空気の一方は、赤道低圧帯に向かって、上昇気流によって空気が少なくなったところに流れ込んできます。赤道低圧帯は、こうして周囲から空気が流れ込んでくる場所、収束する場所でもあることから、熱帯収束帯とも呼ばれます。

こうして、赤道低圧帯から中緯度高圧帯では、空気の回転、循環が生まれることになります。
極高圧帯と亜寒帯低圧帯
今度は北極、南極付近を見てみましょう。北極や南極は地球上で最も温まりにくい場所なので、空気は冷たく重たく、常に下降気流が卓越して、高気圧帯が生じます。これを、極高圧帯と言います。
極高圧帯で地表に降りてきた冷たい空気は、低緯度方向へと流れていきますが、やがて緯度60度のあたりで、先ほど中緯度高圧帯で下降して、高緯度側に流れてきたやや暖かい空気とぶつかります。
そのため、冷たい空気の上に暖かい空気が乗るような形で、緯度60度付近でもう一つ上昇気流が発生して、低気圧帯が生まれます。この低気圧帯を亜寒帯低圧帯と言います。
- 赤道低圧帯(熱帯収束帯)……赤道付近で1年中上昇気流が卓越する低圧帯
- 中緯度高圧帯(亜熱帯高圧帯)……緯度30度付近で下降気流が卓越する高圧帯
- 亜寒帯低圧帯……緯度60度付近で上昇気流が発生する低圧帯
- 極高圧帯……北極・南極付近で下降気流が卓越する高圧帯
こうして地球全体で見ると、大きく3つの循環が出来上がります。

恒常風とコリオリの力
さて、これがどう風を生み出すのか見ていきましょう。分かりやすくするために、先ほどの図を拡大して、北半球だけ見てみます。
中緯度高圧帯と赤道低圧帯の間では、北から南に風が吹くことになり、中緯度高圧帯と亜寒帯低圧帯の間では、南から北に風が吹くことになるように見えます。しかし実際には、ここに地球の自転の影響を加えて考える必要があります。
自転の速さは緯度によって違う
地球は西から東に向かって自転しているので、地球の上に乗っている我々も空気も、止まっているように見えても、実際は地球の自転と同じスピードで動いています。
ただ、このスピードは場所によって違います。赤道上であれば、自転のスピードは1日で地球1周分ですが、緯度の高いところでは1日に動く円周の長さもずっと少なくなるので、自転のスピードもゆっくりになります。北極、南極なら自転のスピードはゼロです。

つまり、緯度が低い場所ほど、そこにある人も空気も速く動いていることになります。
偏西風とジェット気流
そのため、緯度30度付近と緯度60度付近を比べると、緯度30度付近にある空気の方が速く東方向に動いています。東方向への速い動きを持ったまま、北方向に風が流れると、慣性力によって東向きに風が曲がっていくことになります。
この風は、地表にいる人から見ると西から吹いているように見えるので、西風と言いますが、中緯度高圧帯と亜寒帯低圧帯の間で、こうして吹く西風を偏西風と言います。

偏西風は上空ほど風が強くなるという性質があって、上空1万メートルくらいの場所では、西から東に向かって時速300kmにも達するようなすごいスピードで風が流れています。この風をジェット気流と言い、ちょうど日本の上空あたりを吹く風なので、飛行機はこのジェット気流にうまく乗ることで燃料を節約して目的地まで飛んでいこうとしています。
貿易風と極偏東風
続いて、中緯度高圧帯から熱帯収束帯への風を考えてみましょう。この場合は、赤道付近の方が自転のスピードが速いことになります。
すると、北からの北風は地面が自転するスピードに置いていかれてしまって、進む向きが曲がっていきます。つまり、中緯度高圧帯と熱帯収束帯の間では北東からの風が吹くことになり、これを貿易風と言います。
同様の仕組みで、極高圧帯から亜寒帯低圧帯に向かっても東からの風が吹くことになって、この風は極偏東風と呼ばれます。

コリオリの力と恒常風
このように、自転している場所で空気が移動すると、実際には場所によって自転のスピードが違うだけなのですが、あたかも風をぐにゃっと曲げるような力が見かけ上生じているように見えてしまいます。この見かけ上の力をコリオリの力と言います。
偏西風や貿易風は、このコリオリの力によって生じているとも言えます。
なお、今説明した偏西風や貿易風が曲がる仕組みは、やや発展的な内容になりますので、メカニズムはひとまず置いておいて、風の名前と吹く方向だけ覚えてしまっても、高校地理ではそんなに差し支えないかと思います。
さて、今見てきた貿易風、偏西風、極偏東風は、1年中吹いている風という意味で、恒常風と呼ばれます。
- 貿易風……中緯度高圧帯から熱帯収束帯へ吹く、北東からの風
- 偏西風……中緯度高圧帯と亜寒帯低圧帯の間で吹く西風
- 極偏東風……極高圧帯から亜寒帯低圧帯へ吹く、東からの風
実際の風の動きを見る
では、今見てきた風の流れを実際に見てみましょう。earth.nullschoolというウェブサイトは、目には見えない風の動きを可視化してくれるサイトです。
赤道付近に近づいて見てみましょう。このように赤道に向かって、両側から北東と南東から貿易風が吹き込んでいる様子が、はっきりと見て取ることができます。

こちらは、上空1万メートル付近の風の動きで、西から東にジェット気流が強く動いているのがわかります。

大気大循環と降水量の関係
続いて、この大気大循環が各地の雨、降水量に与える影響を見ていきます。
雨というのは、上昇気流のある場所で降ります。上昇気流によって空気が上空に昇っていくと、空気が冷やされて、空気中に含まれていた水分、水蒸気が雲になります。そして雲から雨が降るため、上昇気流のある場所では雨が降りやすいということになります。
逆に下降気流がある場所では、空気がどんどん下に下がってきてしまうので、雲ができません。そのため、下降気流のある場所では雨が少なくなります。

この仕組みを大気大循環の図に当てはめてみます。赤道低圧帯では常に上昇気流が卓越しているため、雨がたくさん降る地域、多雨地域になります。亜寒帯低圧帯も同様に雨がたくさん降ります。
逆に、中緯度高圧帯や極高圧帯は常に下降気流が卓越しているため、雨が降らない地域、少雨地域になります。

つまり、赤道付近から高緯度側に向かって、多雨、少雨、多雨、少雨と、雨の多い場所と少ない場所が交互に現れることになります。
こちらの図は世界の年降水量を表した図ですが、赤道付近には雨が多くて、緯度30度付近、サハラ砂漠のあたりは雨が少なくて、そしてまた雨が多くなって、北極の近くは雨が少ないという傾向が大まかに見られることがわかります。

雨季と乾季が生じるしくみ
大気大循環は、さらに雨季と乾季も生み出します。
太陽の光が一番当たる場所が赤道低圧帯と呼ばれましたが、太陽の光が一番当たる場所というのは常に赤道上ではありません。地球が自転する軸、これを地軸と言いますが、この地軸がやや傾いて自転しているため、太陽が真上に来る場所というのは季節によって変化します。
7月、北半球が夏のときには、赤道よりも北側で太陽が真上に来るため、赤道低圧帯の位置も赤道よりもやや北にずれます。それに伴って、中緯度高圧帯や亜寒帯低圧帯なども全体が北側に動きます。結果的に、雨の降る場所、降らない場所というのも北側に動きます。
1月では逆に、太陽は赤道よりも南で真上に来るため、赤道低圧帯の位置も、他の気圧帯の位置も全体が南側に動きます。

緯度による降水パターンの違い
この1月と7月の図を重ねて見てみましょう。
赤道付近は1月でも7月でも赤道低圧帯に含まれるため、1年中雨の降る気候となります。
赤道から少し緯度が上がると、ある時期は中緯度高圧帯に含まれるので雨が降らないけど、ある時期には赤道低圧帯に含まれるので雨が降るというように、雨季と乾季の分かれる場所になります。
さらに高緯度側に行くと、1年中中緯度高圧帯に含まれて、年中乾燥という場所になります。

つまり、赤道から緯度が上がるにつれて、年中多雨、雨季と乾季、年中乾燥という降水パターンの変化が生まれます。
アフリカと地中海に見る実例
ここまで見てきた降水パターンが、実際の地域でどのように現れているのかを確認していきましょう。
アフリカ大陸
このパターンが最もはっきり見られるのがアフリカ大陸です。
衛星写真で見ると、赤道から高緯度側に向かって、濃い緑から茶色にきれいに色が変化していますが、赤道付近の濃い緑色の場所は1年中雨の降る熱帯雨林です。

薄い緑の地域は雨季と乾季の分かれるサバンナが広がっており、茶色い地域は年中乾燥するサハラ砂漠が広がっています。
7月と1月におけるアフリカの降水量を比べると、7月には降水量の多い場所、赤道低圧帯が赤道よりも北側に位置しているのが確認できますし、1月の方は逆に、赤道よりも南側に位置しているのが確認できるかと思います。
地中海沿岸
また、同様にして地中海周辺の気候も説明することができます。
地中海沿岸は夏になるとカラッと雨が少なく、雨は冬に降るのですが、それは地中海が緯度的にはちょうど次の図の位置に当たるからです。

夏、7月には中緯度高圧帯が北に移動してきて、地中海沿岸を覆ってしまうので、雨が降らずに乾燥した気候になります。
しかし冬、1月には、南下してきた亜寒帯低圧帯の下に入るため、冬にはたくさんの雨が降るということになります。
まとめと次回予告
今回は、風の吹く仕組みから始めて、大気大循環による4つの気圧帯と3つの循環、そこから生まれる恒常風、そして気圧帯の季節移動による雨季と乾季の生じる仕組みまでを見てきました。
次回は、引き続き別のタイプの風と雨を見ていきます。
この記事の内容を確認する問題に挑戦して、理解を定着させましょう。全10問・約3分
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