季節風(モンスーン)、局地風、熱帯低気圧

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UNIT 03
世界の気候
LESSON 03

季節風(モンスーン)、局地風、熱帯低気圧大気大循環だけでは決まらない風と雨

陸と海の比熱の違いから季節風の向きが逆転する理由を整理し、モンスーンアジアの降水量、ヨーロッパの局地風、地域によって呼び名が変わる熱帯低気圧と高潮までを解説します。

▶ 動画 8:32

この記事でわかること

  • 陸と海の比熱の違いから、季節風が夏と冬で吹く向きを変える理由を説明できる
  • モンスーンアジアの降水量の季節差と、地形性降雨が起こるしくみを説明できる
  • フェーン現象のしくみと、熱帯低気圧の地域ごとの呼び名や高潮による被害を説明できる

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動画:季節風(モンスーン)、局地風、熱帯低気圧

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高校地理「世界の気候」の第3回は、季節風(モンスーン)、局地風、熱帯低気圧です。

前回の「大気大循環」の回では、世界全体の大きな風の流れについて学びました。しかし、風の吹く仕組みは大気大循環だけではありません。大気大循環を土台として、それ以外にもさまざまな力が働くことで、ある場所でどんな風が吹くかが決まります。

この記事では、大気大循環以外の風として、季節風(モンスーン)、局地風、そして熱帯低気圧を見ていきます。

季節風(モンスーン)が吹くしくみ

季節風はモンスーンとも呼ばれ、文字通り季節によって吹く向きが変わる風のことです。季節風が最も顕著に見られるのは、日本を含む東アジアから東南アジア、そして南アジアにかけての地域です。

東アジアから南アジアにかけての地図に、7月は海から陸へ、1月は陸から海へ向かう季節風の向きが赤い矢印で示されている。
季節風は夏と冬で吹く向きが逆になる

地図に示したように、7月には海から陸に向かって風が吹きます。しかし1月になると風向きが変わり、陸から海へと吹くようになります。

では、なぜ季節によって風の吹く向きが変わるのでしょうか。それは、陸地と海の比熱の違いにあります。以前の「世界の気温」の回でも比熱について触れましたが、陸地は海よりも比熱が小さいため、陸は温まりやすく冷めやすく、海は温まりにくく冷めにくいという性質があります。

そのため、夏になると陸地の方が海よりも気温が高くなります。イメージとしては、夏に砂浜に行くと、砂の上は裸足で歩けないくらい熱くなっているのに、海の中に入ると水は冷たい、という状態です。

すると、陸地の上の空気が海の上より暖まります。暖まった空気は軽くなって上昇し、上昇気流が発生します。その分だけ地表付近の空気が減るため、陸地は低気圧帯となります。そこへ空気を補おうとして、海から陸地に向かって空気が流れ込みます。こうして夏は、海から陸に向かって風が吹きます。

冬にはこれが逆になります。陸地が寒くなる一方で、海はそれほど冷たくなりません。すると気温が高い海の方に上昇気流が生じて、海の上に低気圧帯が生まれます。逆に、冷たくなって空気が下がってくる陸地側には高気圧帯が生まれます。こうして冬は、陸から海に向かう風となります。以上が、季節風の向きが夏と冬で逆になる仕組みです。

陸地と海の断面図。夏は陸地側が低気圧、海側が高気圧となり海から陸へ風が吹き、冬は海側が低気圧、陸地側が高気圧となり陸から海へ風が吹くしくみが示されている。
陸と海の比熱の違いが、季節風の向きを逆転させる

季節風と降水量

この季節風によって、東アジアから東南アジア、南アジアでは、季節によって降水量が大きく変わります。1月には大陸から乾燥した季節風が吹くため、降水量が少なくなります

しかし7月には、海から湿った季節風が吹きこむため、たくさんの雨が降ります。下の図は、7月と1月の降水量を、季節風の向きとあわせて示したものです。

地球儀上の7月と1月の降水量を比較した図。7月は海からの湿った季節風によって東〜東南〜南アジアで降水量が多く、1月は大陸からの乾燥した季節風によって降水量が少ないことが示されている。
季節風の向きが変わることで、降水量も季節によって大きく変化する

東アジアから東南アジア、南アジアは、季節風の影響で季節によって降水量が大きく異なることから、モンスーンアジアとも呼ばれます。季節風のもたらすこの雨が、モンスーンアジアでの稲作を支えてきました。

地形性降雨とチェラプンジ

7月にとりわけ雨が多いのが、インド北東部のアッサム地方やダージリン地方です。この地域では、海から吹いてきた湿った風がヒマラヤ山脈にぶつかって上昇することで雲ができて、たくさんの雨が降ります。このように、湿った風が山にぶつかって上昇し、雲ができて降る雨を、地形性降雨と言います。

世界一雨の多い街として知られるのが、インドのチェラプンジです。年平均降水量は1万ミリを超え、過去には年間2万6000ミリという凄まじい量の雨が降ったこともあります。東京の年平均降水量は約1500ミリです。

年間2万6000ミリって、多すぎてもう想像がつかないです…。

Kiri
Kiri

高さにすると26メートル、東京の17年分くらいの雨が1年で降ったことになりますね。数字だけ見ると現実離れして感じますが、山が湿った風を受け止め続けると、それだけの雨になるということです。

アッサムティーやダージリンティーという名前を、紅茶の銘柄として聞いたことがあるかもしれません。この地域には、茶の栽培に適した条件がそろっていました。

  • 季節風がもたらす豊富な雨
  • 秋から冬にかけての乾燥
  • ヒマラヤ山脈に向かう山の斜面と涼しさ

こうした条件から、アッサム地方やダージリン地方は世界でも有数のお茶の産地となりました。

なお、インド西部の沿岸部も7月に雨が多くなっています。ここも、西ガーツ山脈に季節風がぶつかることで雨が降る、地形性降雨の代表例です。

インド西部の降水量地図に「西ガーツ山脈」のラベルと矢印が加えられた図。西ガーツ山脈も地形性降雨の代表例として示されている。
西ガーツ山脈の西側(風上側)だけが濃く色づいている

地形性降雨は日本でも見られます。冬の北西季節風は、日本海を渡る間に水蒸気を含み、山地にぶつかって上昇することで、日本海側に大雪を降らせます。季節風と地形性降雨が組み合わさった、身近な例です。

限られた地域に吹く局地風

続いては局地風です。局地風とは、限られた地域、その地方にだけ吹く風のことです。例えば群馬県では、毎年冬になると山からとても冷たくて乾燥した風が吹いてきます。この風はからっ風と呼ばれます。このように、その地域にだけ特徴的に吹く風に名前をつけて呼んでいるのが局地風です。

局地風はいろいろなところで見られますが、高校地理では特にヨーロッパの局地風を扱います。覚えておきたい局地風は、フェーン、ミストラル、ボラ、シロッコの4つです。

ヨーロッパの地図に、フェーン(アルプス山脈北側)、ミストラル・ボラ(北から)、シロッコ(サハラ砂漠から)の4つの局地風の位置と吹く向きが矢印で示されている。
ヨーロッパで覚えておきたい4つの局地風

フェーン現象

この中で一番覚えておきたいのは、フェーン現象の名前の由来にもなった風、フェーンです。フェーンとは、南からアルプス山脈を越えてドイツやスイスに吹いてくる、暖かくて乾燥した風です。

断面図で見てみると、まず南から地中海を通った湿った風が吹いてきて、アルプス山脈にぶつかって上昇していきます。こうして上昇するときに気温が下がりますが、気温の逓減率は、以前の「世界の気温」の回では100mにつき平均0.65℃と解説しました。実はこの数字は、空気が湿っているともっと小さくなり、乾燥していると大きくなります。

アルプス山脈の断面図。南側から上昇した20℃の湿った空気が標高2000mの山頂で10℃になり、北側へ下降して30℃の乾いた風になるフェーン現象のしくみ。
20℃の空気が山を越えると30℃に。高温で乾燥した風になるフェーン現象

例として、20℃の湿った空気が標高2000メートルの山にぶつかったとしましょう。湿った空気の気温の逓減率は100mにつき約0.5℃です。すると2000メートルの上昇で10℃低下するので、気温は10℃になります。このとき、上昇する途中で雲ができて雨が降るため、空気は水蒸気の多くを失います。

水蒸気の少なくなった空気は、100mにつき約1℃の割合で気温が変わります。そのため2000メートルの高さから降りてくると20℃気温が上がり、30℃の暑くて乾燥した風が吹き降ろすことになります。このように、山を越えることで暑くて乾いた空気になることをフェーン現象といい、日本の夏でも見られる現象です。

同じ空気なのに、山を越えただけで20℃も上がってしまうんですね。

Kiri
Kiri

雨を降らせて乾いた空気に変わったことが効いています。日本でも夏に「フェーン現象で今日は猛暑日」とニュースで言うことがあるので、聞いたらこの図を思い出してみてください。

その他の局地風(ミストラル・ボラ・シロッコ)

ミストラルとボラは北から吹いてくるので、乾燥した冷たい風です。

シロッコはサハラ砂漠から吹いてくる高温多湿な風で、砂と一緒に吹いてくることもあります。砂漠から吹いてくるのに多湿なのは、地中海を渡る間に水蒸気を含むためです。

フェーン以外の局地風については、名前と場所、それから暑いか冷たいか、乾燥しているか湿っているかだけ押さえておけば十分です。

フェーン現象の断面図とヨーロッパの局地風地図とともに、「ミストラル、ボラ…乾燥、寒冷」「シロッコ…高温多湿で砂塵を伴う」という特徴のまとめが示されている。
ミストラル・ボラは乾燥した冷たい風、シロッコは高温多湿な風

熱帯低気圧と高潮

最後は熱帯低気圧です。日本にやってくる台風も、その一つです。発生する詳しいメカニズムは理科に譲りますが、地理では次のように押さえておけば十分です。熱帯低気圧は、赤道の真上ではなく、赤道からやや離れた熱帯の海上で発生します。そして陸地に接近し、暴風や大雨などの被害をもたらします。

同じ熱帯低気圧でも、発生する場所によって呼び名が変わります。

日本にやってくるものは台風と呼ばれますが、インド洋や南太平洋ではサイクロン、大西洋・カリブ海やメキシコ湾ではハリケーンと呼ばれます。

呼び方が3つもあると、少しややこしいです。

Kiri
Kiri

地図の上で、東アジアなら台風、インド洋と南太平洋ならサイクロン、大西洋・カリブ海ならハリケーン、と位置で結びつけて覚えてしまうのがおすすめです。

熱帯低気圧は強い雨風をもたらしますが、低気圧のため海面が吸い上げられる高潮という現象が起こります。海抜の低い地域では、暴風とともに海水が市街地へ流れ込み、大きな被害が出ることがあります。

世界地図に、東アジアの台風、インド洋・南太平洋のサイクロン、大西洋・カリブ海のハリケーンの発生域と名称が矢印で示されている。下部には高潮による沿岸浸水被害の写真と、被害は海抜の低い沿岸部で大きいという説明文が添えられている。
呼び名は発生する海域で決まる。高潮の被害は海抜の低い沿岸部で大きい

まとめ

今回は、大気大循環以外の風として、季節風・局地風・熱帯低気圧を見てきました。要点は次の4つです。

  • 季節風は陸と海の比熱の違いによって夏と冬で吹く向きが逆になり、モンスーンアジアの降水量に大きな季節差を生む
  • 地形性降雨は、湿った風が山にぶつかって上昇し雲ができることで起こる。チェラプンジ、西ガーツ山脈、日本海側の大雪がその例
  • 局地風はその地域にだけ吹く風で、フェーン・ミストラル・ボラ・シロッコを押さえる
  • 熱帯低気圧は地域によって台風・サイクロン・ハリケーンと呼ばれ、高潮による被害に注意する
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