海流と気候(海岸砂漠、エルニーニョ現象など)― 海流の生じる仕組みと気候への影響 ―
海流が風に吹かれて循環するしくみから暖流と寒流の区別を整理し、西岸気候と東岸気候の違い、海岸砂漠と不凍港、エルニーニョ現象とラニーニャ現象、深層流による熱塩循環までを解説します。
この記事でわかること
- 海流が風に吹かれて循環するしくみをもとに、暖流と寒流の流れる向きを説明できる
- 西岸気候と東岸気候の違い、海岸砂漠や不凍港が生まれるしくみを説明できる
- エルニーニョ現象とラニーニャ現象の起こり方、深層流による熱塩循環を説明できる
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高校地理「世界の気候」の第4回は、海流と気候です。海流と気候には、どのような関係があるのでしょうか。
この記事の内容は大きく4つに分かれます。1つ目は海流のしくみで、海流の流れる向きと性質をイメージできるようにします。2つ目は海流と気候で、海流が気候に影響を与える例として、西岸気候・東岸気候、海岸砂漠、不凍港の3つを取り上げます。
3つ目はエルニーニョ現象とラニーニャ現象で、海流に異常が生じている現象です。最後に補足として、深層流と熱塩循環を紹介します。
海流のしくみ
海流で大切なのは、流れの向きと寒流・暖流の区別です。ただし、たくさんある海流を一つ一つ覚える必要はありません。覚えることは一つだけで、海流は風に吹かれて回っている、ということです。
海流は風に吹かれて回っている
お味噌汁の表面に息を吹きかけると流れが見えるように、海の水も風に吹かれるようにして流れています。その風とは、具体的には貿易風や偏西風です。
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単純なモデルで考えます。大陸が2つあり、その真ん中に海があるとします。この海は、現実の太平洋や大西洋にあたると考えてください。ここでは、赤道付近に東から貿易風が、中緯度に西から偏西風が吹いています。
風に吹かれるようにして、赤道付近の海流は東から西へと流れます。そして大陸にぶつかると、南北に分かれます。緯度の高いところまで来ると、今度は偏西風に吹かれて西から東へと向かい、反対側の大陸にぶつかると低緯度側へ戻ってきて、ぐるりと一周します。
こうして海流には、北半球では時計回り、南半球では反時計回りという循環が生まれます。
大陸沿いを縦に走る赤と青の矢印が、次に説明する暖流と寒流にあたる。右側の凡例と見比べてほしい
暖流と寒流
この循環に、暖流と寒流の区別を加えます。暖流とは、暖かいところから冷たいところへ、つまり低緯度から高緯度へ向かう流れのことです。暖流には、暖房のように流れた先の空気を温める効果があります。
一方の寒流は、逆に高緯度から低緯度へ流れる海流です。寒流には、冷房のように大気を冷やすはたらきがあります。
暖流と寒流は、水温が何度以上と決まっているわけではありません。周りの海よりも相対的に暖かいか冷たいか、という区別です。そのため、このモデルで横向きに走る海流について、どちらが暖流でどちらが寒流かを細かく意識する必要はあまりありません。
現実にはもっと複雑な力が働いていますが、基本の流れとしては、ぐるぐると回るモデルをイメージできれば十分です。

海流の名前がたくさん出てきそうで、今から少し不安です。。。

回る向きさえつかめていれば、名前は地図の上で結びつけられます。まずは大まかなイメージをつかみましょう。
太平洋の海流
ここからは、実際の世界の海流を確認します。まずは太平洋です。赤道付近には、貿易風によって東から西へ、北赤道海流と南赤道海流が流れています。この2つはインドネシアあたりで陸地にぶつかり、暖流として南北に分かれていきます。
こうして日本にやってくる暖流が、黒潮、もしくは日本海流と呼ばれる海流です。黒潮はその後、偏西風に吹かれて北太平洋海流という名前で東へ流れます。北米大陸の西側にぶつかると今度は寒流として南下し、この寒流がカリフォルニア海流です。
これで循環はぐるりと一周しますが、太平洋では北側にもう一つ小さな循環ができます。そのため全体としては、八の字を描く循環になっています。八の字の上の部分で日本にやってくる寒流が、親潮、もしくは千島海流です。
北側に大小2つの環流が並び、全体で八の字を描いている。その八の字の下から黒潮が、上から親潮が日本へ向かってくる
南半球はもっと単純で、ぐるりと一周するだけです。オーストラリアの東を暖流が通ったあと、南極近くを流れる西風海流という寒流と合流します。そこから南米大陸沿いを寒流として北上し、この寒流がペルー海流、あるいはフンボルト海流です。
なお、北赤道海流と南赤道海流の間には、赤道反流という逆向きの海流も存在します。赤道反流は西から東へ流れる、傾斜流と呼ばれる海流の一つです。赤道海流によって海水が西側へ寄せられると、西側の海水面が少し高くなります。高くなった西側から低い東側へ、滑り台を降りるように海水が流れようとします。こうして生じるのが赤道反流です。
インド洋と大西洋の海流
続いてインド洋です。北側はユーラシア大陸に塞がれていて環流が一周できないため、ここでは南半球側だけを考えます。インド洋も太平洋と同じように、南赤道海流がアフリカ大陸にぶつかって南下し、西風海流に合流します。そのあとオーストラリア西側を寒流として北上し、ぐるりと一周します。
最後は大西洋です。北赤道海流は南米大陸にぶつかって北上し、メキシコ湾流と呼ばれる暖流として、大陸の形に沿うように方向を変えます。そして今度は北大西洋海流と名前を変え、スカンディナビア半島の付け根まで流れていきます。
この循環に、アフリカ大陸の西側を通るカナリア海流と、グリーンランドの西側を通るラブラドル海流が加わります。こうして大西洋も、全体としては北半球で八の字を描く循環になります。南半球はぐるりと一周するだけですが、アフリカ大陸の西側を流れるベンゲラ海流という寒流の名前は覚えておきましょう。
大西洋も北半球では八の字を描いている。アフリカ大陸の西岸を北上する青い矢印がベンゲラ海流で、このあと海岸砂漠の話でもう一度出てくる
海流が気候に与える影響
ここからは、海流が気候に与える影響を確認します。取り上げるのは、西岸気候・東岸気候、海岸砂漠、不凍港の3つです。
西岸気候と東岸気候
影響の1つ目は、西岸気候と東岸気候です。大陸の西側と東側での気候の違いのことで、ユーラシア大陸の北緯50度から60度あたりで最も顕著に見られます。
大陸の西側には北大西洋海流という暖流が流れ、さらにその上を一年中偏西風が吹いています。そのため、海から暖かく湿った風が吹き込んできます。大陸西岸は冬でもそれほど気温が下がらず、年較差の小さい気候になります。これを西岸気候といいます。
一方、大陸東岸では、冬に大陸から冷たく乾燥した季節風が吹いてきます。そのため冬の寒さが厳しく、年較差の大きい気候になります。このような気候が東岸気候と呼ばれます。
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同じ緯度の帯の上で、西側では海から陸へ、東側では陸から海へと矢印が向いている。風の向きが逆になっている
実際の雨温図で比べます。アイルランドの首都ダブリンは、北海道よりも緯度が高い位置にあります。それでも、最も寒い月の気温は5度ぐらいまでしか下がりません。
一方、同じくらいの緯度で大陸の東側に位置するのが、ロシアのハバロフスクです。こちらは冬に気温がマイナス20度ぐらいまで下がり、降水量も少なくなっています。
先ほどの帯状の地図に、2地点の雨温図を重ねたもの。2本の気温の折れ線の縦の振れ幅を見比べると、年較差の大小がそのまま形に出ている
なお、北米大陸でも同じような傾向は見られますが、西岸と東岸の差がよりはっきり見られるのはユーラシア大陸のほうです。
海岸砂漠
影響の2つ目は海岸砂漠です。寒流の影響によって、中低緯度地域の沿岸部に形成される砂漠を指します。
沿岸に寒流が流れる中低緯度地域では、海の上の空気が寒流によって冷やされます。一方、内陸の空気は暖かいままです。その冷たい空気が陸地に入り込んでくると、陸地近くの空気は冷たく、上空の空気は暖かいという状態になります。
冷たい空気は重たくて下に、暖かい空気は軽くて上に行くという性質があります。そのため、この状態になるとそれ以上は空気が動かなくなり、大気が安定した状態になります。すると上昇気流が生まれず、雲も形成されないため、雨が降りません。こうして形成されるのが海岸砂漠です。
冷たい空気が下、暖かい空気が上。この並びだと、空気は上へ抜けられない
具体例は3か所あります。寒流の名前と砂漠の名前をセットで覚えておきましょう。
- ベンゲラ海流によって形成される、アフリカのナミブ砂漠
- ペルー海流(フンボルト海流)によって形成される、南米大陸のアタカマ砂漠
- カリフォルニア海流によって形成される、北米大陸のカリフォルニア半島の砂漠(この1か所だけは、砂漠名ではなく半島名で覚えます)
3か所とも、青い寒流の矢印が低緯度側へ向かう大陸の西側にあることが読み取れる

砂漠って、海から遠い内陸にできるものだと思っていました。

海のすぐそばに砂漠が存在する理由は、実は海流にあったんです。寒流の名前と砂漠の名前は、必ずセットで覚えておこう。
不凍港
影響の3つ目は不凍港です。通常、北極海にある港は冬になると凍って使えなくなります。しかしノルウェー西岸にある港は、暖流である北大西洋海流のおかげで、冬でも凍らずに使えます。このように、冬でも凍らない港を不凍港といいます。
ノルウェーのナルビクなどが不凍港の代表例です。ナルビクは冬に、隣国スウェーデンのキルナ鉄山で採れた鉄鉱石を積み出す港としても使われています。
暖流の赤い矢印が、スカンディナビア半島の北端近くまで届いている。ナルビクはちょうどこの矢印が洗う位置にある
エルニーニョ現象とラニーニャ現象
ここからは、海流に関係する異常気象として、エルニーニョ現象とラニーニャ現象を説明します。すでに確認したとおり、太平洋では貿易風によって東から西へ海流が流れていました。
平常時のペルー沖で起きていること
平常時は、海面近くの暖かい海水が貿易風によって西へ運ばれます。そのため南米側、具体的にはペルー沖合では、下から冷たい海水が湧き上がっています。こうして湧き上がってくる冷たい海水が湧昇流です。
湧昇流は、深い海にたまっていた栄養分(栄養塩)を表層まで運び上げます。それをもとに植物プランクトンが大量に発生し、イワシなどのエサになるため、ペルーではイワシ漁、アンチョビ漁が非常に盛んです。
断面図の左側に暖水が厚くたまり、右の南米側では冷水の矢印が上を向いている。これが湧昇流にあたる
エルニーニョ現象
しかし、何らかの原因で貿易風が弱まると、暖かい海水が西側へ十分に運ばれなくなります。すると冷たい湧昇流も弱くなるため、ペルー沖合の海水温が平年よりも異常に高くなります。この現象がエルニーニョ現象です。
エルニーニョ現象が起こると、湧昇流が運び上げる栄養分も減り、エサとなるプランクトンが大きく減ってしまいます。そのためペルー沖では、イワシやアンチョビの獲れる量も減ります。
上段は先ほどの平常時の断面図の再掲。下段のエルニーニョ現象時と、南米側の冷水の矢印の太さや暖水の広がり方を見比べてほしい。左下には、この後で説明する日本への影響もまとめてある
エルニーニョ現象と日本の天候
エルニーニョ現象が起こると大気のバランスが崩れ、世界中でさまざまな異常気象が生じます。日本では、冷夏や暖冬になりやすいと言われています。
エルニーニョ現象では、暖かい海水が西に運ばれる力が弱くなります。そうすると、日本の南側での海水温が平年よりも異常に低くなります。夏には南からの暖かい空気が入ってきにくくなり、冷夏になりやすくなります。
冬には、通常であれば陸より海のほうが暖かいために、陸から海へ季節風が吹きます。海水温が平年よりも低いということは、陸と海との気温差が小さくなることを意味します。このため大陸からの冷たい空気がやって来づらくなり、暖冬の傾向になります。

地球の反対側の海のことが、日本の夏や冬にまで効いてくるんですね。

海と大気はつながっているからね。ニュースでエルニーニョという言葉を聞いたら、ペルー沖を思い出してみて。
ラニーニャ現象
これとは逆に、貿易風が何らかの理由で強くなることもあります。すると湧昇流も強くなり、ペルー沖合の海水温が平年よりも異常に低くなることがあります。この現象がラニーニャ現象です。
深層流と熱塩循環
共通テストでは、ここまでの内容で十分です。ただし私立大学の入試や二次試験では、これ以外の海流について問われることもあります。そこで、やや発展的な内容を補足します。
表層流と深層流
ここまで扱ってきた海流は、風の吹く力によって生じます。そのため、海水面から数百メートルぐらいまでの浅い場所で起こる海流であり、表層流と呼ばれます。表層流による海流の循環は、風成循環といいます。
これに対して、海のもっと深い場所を流れるのが深層流です。深層流の循環を生み出すのは、風の吹く力ではなく、海水の温度や塩分濃度です。
熱塩循環のしくみ
暖流として北上する北大西洋海流は、グリーンランドの近くまで来ると海水温度が急激に低下します。また、北上してくる過程で海水がたくさん蒸発するため、塩分濃度も濃くなります。海水温の低下と塩分濃度の上昇という2つの要因によって、グリーンランド付近の海水は冷たく重たくなり、下へ沈み込みます。
こうして沈んだ重たい海水は、大西洋の底を這うようにしてゆっくりと南下します。そして南極付近で、同じように冷えて沈んだ海水と合流し、ゆっくりと循環します。そこからインド洋や太平洋へ向かい、やがて湧き上がって表層流に戻ります。このような深い海での海水の循環、深層流による循環を熱塩循環と呼びます。
表の1行目「吹送流」は、括弧書きのとおり本文でいう表層流にあたる。地図の赤い帯と青い帯を目でたどると、グリーンランド付近で赤から青へ入れ替わっている
熱塩循環は秒速1センチ程度でゆっくりと動き、一周するのに1000年や2000年かかります。しかし運んでいる海水の量やエネルギーはとても大きく、地球全体の気候に大きな影響を与えています。
この記事の内容を確認する問題に挑戦して、理解を定着させましょう。全10問・約3分
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